予想外の悲劇…「働かなくても生きていける生活」を手に入れた若者に襲いかかった「まさかの真実」
ふつうに生きていたら転落するーー! あまりに残酷な「無理ゲー社会」を生き延びるための「たった一つの生存戦略」とは? 【写真】「働かなくても生きていける生活」を手に入れた若者が手に入れたものは…… 作家の橘玲氏が、ますます難易度の上がっていく人生を攻略するために「残酷な世界をハックする=裏道を行く方法」をわかりやすく解説します。 ※本記事は橘玲『裏道を行け』(講談社現代新書、2021年)から抜粋・編集したものです。
「FIRE」という生き方
1939年にニューヨークのスパニッシュ・ハーレムに生まれたジョー・ドミンゲスは、英語を満足に話せない母親と生活保護に頼りながら暮らし、ストリートギャングのメンバーになって爆発物のつくり方を覚え、抗争相手への襲撃作戦を練った。そんななかで、福祉システムや司法システムをいかに利用するかを学んでいった。 大学進学の機会がなかったドミンゲスにとって幸運だったのは、1950年代のアメリカが学歴社会の形成途上だったことで、聡明だった彼はウォール街に職を得ることができた。 60年代初頭には、最初期のコンピュータを使ってテクニカル分析をするためのツールを開発し、それを投資銀行に売って10万ドル(2020年で70万ドル≒8000万円相当)の資産を築くと、「30歳になる前にアーリーリタイアし、自分の人生を生きる」という目標を実現した。 その後、大学を卒業して女優を目指していたヴィッキー・ロビンと出会ったドミンゲスは、「モノを買うことで幸せになれる、多いほど豊かだという幻想」からの解放を説く社会活動を2人で始め、1992年にその主張を“Your Money or Your Life(あなたのお金か、あなたの人生か)”にまとめてベストセラーになった。 ところが1997年にドミンゲスはがんのために世を去り、2004年にはロビンもがんの宣告を受けて、すべての活動をやめてリタイア生活を送ることになる。だが2007~08年のリーマンショックと世界金融危機のあと、ドミンゲスとロビンの思想はミレニアル世代を中心にSNSで広がり、「FIRE(ファイアー)」と呼ばれるようになった。「経済的独立、早期退職 (Financial Independence, Retire Early)」の頭文字だ。 このブームを受けて、ロビンは2018年に“Your Money or Your Life”の4度目の改訂版を出し、総発行部数は累計で100万部を超えた。