国内開催できないスーパーラグビー、サンウルブズが代替地の豪州で完敗…興行収益メド立たず長期海外遠征で苦悩続く
国際リーグであるスーパーラグビーに参戦しているサンウルブズは6日、オーストラリア・ニューサウスウェールズ州のWINスタジアムでブランビーズと対戦した。本来ならば、このカードは8日に大阪・東大阪市花園ラグビー場で行われる予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて開催日時と会場が変更になっていた。 日本から会場に来たファンは、選手の知人など数人に限られていた。ちなみにオーストラリアは、ウイルスの脅威へは日本ほどシビアには構えていない。街角にはマスク姿の市民はそう多くなく、飲食店でも消毒用のアルコールなどは置かれていない。 試合は終盤戦に突入した。自陣ゴール前に押し込まれながら決死の防御でインゴールでのグラウンディングを防いだ。だが、プレー再開後の連続フェーズで徐々に押し込まれる。結局、この日7本目のトライを許した。 そして、14―47のスコアでノーサイド。福岡での開幕戦を勝利したサンウルブズだったが、その後は4連敗。しかし、ゴール裏スタンド下のトレーニングルームに作られた即席の会見場で、大久保直弥ヘッドコーチは、あくまで前向きに言った。 「厳しい状況というのは、選手もスタッフも全員、理解しています。いまの日本の状況のなか、プロチームとしてエネルギーのある試合をしたい。皆がそう思っています」 日本ではトップリーグが延期。その言葉には、遠く豪州の地から明るいニュースを届けられなかった悔しさが滲んだ。 2月27日。チームを運営するジャパンエスアール(JSRA)の渡瀬裕司CEOは、「観に来てくださる方々と選手のウェルフェア(福利)を守らねばならない」と、リーグを統括するサンザー、スーパーラグビーに参加する国々のチームメディカルオフィサー、そしてJSRAは、3月に予定されていたサンウルブズの国内ホームゲームの開催について協議していた。
今季限りでスーパーラグビーから除外される予定のサンウルブズは、もともと財政的にもチャレンジを強いられていた。そんな中、主たる収入源のホームゲームがなくなることは、死活問題。数字こそ明らかにされていないが、この試合への準備段階に、いくらかの支出があり、その上、約1万枚が売れていたというブランビーズ戦の前売り券も、中止が決定次第、払い戻しとなる。 しかし、「感染リスクと両天秤にかけて苦渋の決断」と、渡瀬CEOは、結局、この第6節の試合と、14日に東京・秩父宮ラグビー場で組まれていた第7節のクルセイダーズ戦のホーム開催を断念、両軍にとっての中立地のオーストラリア各地で開催することが決まった。 しかも、どちらも他の試合とのダブルヘッダーという形だ。サンウルブズとしては、収益を得られぬ代わりに、これ以上かかるコストを減らしたかった。そのためには、すでに試合が組まれている場所でマッチメイクするほかなかったのである。 現地での40名以上分のホテルの手配、練習場の確保にはサンザーの支援を受けられた。しかし、もともと2月下旬から約2週間の予定だった海外遠征は、クルセイダーズ戦以降に組まれていたオーストラリアツアーを含めて計約6週間に長期化した。2月27日の時点で、渡瀬はチームの帰国予定を「(3月28日の)ワラターズ戦が終わってから」と説明している。 さらにブランビーズ戦に向けては、練習会場が、その日の朝までわからないということもあった。初めて世界に出ているコーチングスタッフもいるなか、スーパーラグビーにおいてもひときわ厳しい試練が課されている。 しかし、このチームに入るまで早大の主将を務めてきた齋藤直人は、大久保からこんな言葉を伝えられたという。 <このような厳しい局面で強くいつづけられれば、他にどんな状況に直面しても怪我などでリタイアせず最後まで戦い続けられるだろう>