山梨県の高校生は「バイク通学」が多かった! いったいなぜ?
バイクと電車の選択理由
では、『スーパーカブ』の主人公・小熊のように、誰でも在学中に免許を取り、バイク通学を始めることができるのだろうか。 先に答えをいってしまうと、答えは多くの場合「できる」だ。山梨県内の多くの高校では、正式な手続きをして許可を受ければバイク通学が可能だ。条件があったり、バイク通学を認めていない高校もあったりするが、少数派だ。 しかし、バイク通学が一般的とはいえ、すべての生徒がバイクで通学しているわけではない。山梨県南部のJR身延線沿線の峡南地域を舞台にした『ゆるキャン△』では、登場人物の自宅や高校が駅に近いことが多く、主人公・リンのようにバイク通学の生徒もいるが、身延線通学の生徒が多く描かれている。 身延線は日中、1時間に1本程度しか電車が走っていない。 「バイクで通学できるのなら、本数の少ないローカル線で通学する生徒の方が多いのは不思議だ」 と思う人もいるかもしれないが、道路事情がそれほどよくないのにバイクで通学するのは決して楽ではなく(後述)、自宅と高校が駅に近い場合は電車で通学する生徒が多い。したがって、電車通学生が多い山間部の学校というのは不自然な描写ではない。 このほか、南アルプス市周辺には、山梨県のバス路線としては珍しく、甲府市の中心部(朝夕は非常に混雑する)を経由せず、郊外都市と高校のあるエリアを直接結ぶ「スクールライナー」のような朝夕運行の路線もある。そのような地域では、バス通学を選ぶ生徒も多い。
バイク通学の意外なハードル
自転車よりも速く、公共交通よりも小回りが利くバイク通学を選択できるのはうらやましい限りだ。しかし、バイク通学は意外と大変なことも多い。 山梨県は車社会ではあるが、道路事情は決してよいとはいえない。前述したように、山梨県は地形の制約上、狭い道が多いため都市部では渋滞が多い。 そして、ひとたび山に入れば急勾配やカーブが多い。さらに、野生動物が飛び出してきて愛車を傷つけることもあり、保険の等級も下がる可能性がある。 バイク通学の難しさは道路事情の厳しさだけではない。山梨県は内陸県で山が多いため、ガソリンの価格も全国ベスト10に入る高さなのだ。 バイク通学の文化は、今やさまざまな作品に描かれる「山梨らしい光景」のひとつとなっている。一見、うらやましいような気もするが、 ・ガソリン代 ・車検代 ・保険料 そして本人(運転手)自身の負担を考えるとデメリットは大きく、険しい地形ゆえに公共交通が不十分という地域特性をリカバーするための 「やむを得ない策」 ともいえる。