「昨年のドラフト1位3人がトミー・ジョン手術、うち1人は育成に」有望投手たちのヒジに今起きている“異常事態”…医師は「小学生に執刀したことも」
2024年も、プロ野球ドラフト会議では多くの有望選手が指名された。だがその陰で、昨年1位指名された12人のうち、3人もの大卒投手がデビューイヤーにヒジのトミー・ジョン手術を受けてリハビリ中で、うち1人は来季育成契約に切り替えられるという。なぜこんな事態が起きているのか、ピッチャーの健康をめぐる現状を追った。<全2回の前編/後編を読む> 【写真】「そういえばあんまり顔を見る機会なかった…」昨年のドラフト1位、阪神・下村、中日・草加、ヤクルト・西舘らを見る 即戦力と期待して獲得した球団にしてみれば、まさしく“痛手”だろう。 2023年のドラフト会議で1位指名された大卒の3投手――中日の草加勝(創志学園-亜細亜大)、阪神の下村海翔(九州国際大付-青山学院大)、そして東京ヤクルトの西舘昂汰(筑陽学園-専修大)が、いずれもデビューイヤーにトミー・ジョン手術(ヒジの腱や靱帯を再建する手術)に踏み切る事態に陥ったのだ。草加と下村はシーズンも始まらないうちに右腕の異常を訴え、1年をまるまる棒に振ってしまった。秋にメスを入れた西舘は、来季育成契約を提示されたと報じられている。
球速の高速化で負担が大きくなっている
大学日本代表を率いる慶應義塾大の堀井哲也監督に、有望な大卒投手が揃って手術が不可避な状態となった要因について訊ねてみると、こう答えた。 「私のような立場の人間が憶測でものを言ってはいけないと思いますが、現実として、あるいは事実として、投手の球速の高速化に伴い、一昔前よりも出力が上がって肩肘にかかる負担が大きくなっているのは間違いないでしょう」 プロ野球(NPB)のあるスカウトが語る。 「もし担当した投手が1年足らずでトミー・ジョン手術を受けることになったら、スカウトとして当然ながら大きな責任を感じます。ドラフト前の段階で行われる面談などで、われわれは選手の既往歴(現在にいたるまでの故障歴)や身体の状態を訊ねます。気にするのは主に肩ヒジの状態になりますが、選手が不安を抱えていたとしてもあくまで自己申告ですから、隠そうと思えば隠せる。指名後、球団が行うメディカルチェックで異常が見つかることはありますが、だからといって、契約を見送るなんてことはできません。ケガの有無や危険性を見抜くこともスカウトには問われていると思います」 トミー・ジョン手術とは、損傷あるいは断裂したヒジの内側側副靱帯の再建手術だ。ロッテの大エースだった村田兆治氏や巨人時代の桑田真澄氏の時代のように、ヒジにメスを入れること=投手生命の危機とはならない。
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