<非鉄金属市況を占う>主要国の輸送機需要堅調か。銅はパナマ鉱山に不透明感
需給は品種によって異なるが、需要面において多くの品種で意識されるのはマクロ経済でも重視されている米中など主要国の経済動向だ。例えば、昨年の中国においては、不動産不振が銅やアルミの需要減を想起させたほか、貿易統計の輸入動向によっても相場に影響が見られた。中国の非鉄金属需要は、不動産は今年も厳しい展開との見方が商社筋から出ている一方、輸送機や太陽光発電に対し堅調な推移が見込まれている。米国でも輸送機は底堅い展開になるとみられる。 供給面では、昨年緊迫化した中東情勢が地政学リスクとして認識されている。戦闘激化によって航路への影響が強まれば、非鉄金属に対する供給不安となって相場を押し上げる可能性がある。 LMEに上場する個別品種については、銅は供給過剰の見通しが出ているが、供給不足に転じる可能性がある。パナマ・コブレ鉱山の供給に対して不透明感が生じ、供給懸念がみられる。パナマ政府から閉鎖命令が出されており、短期間での操業再開は困難とみられ、長期化すれば影響が出ると見込まれる。また例年あるストライキにも反応するだろう。 アルミは想定される減産シナリオが起こるかがポイントとなりそうだ。エネルギー価格など生産コスト増によって減産していた製錬所の追加減産、最大生産国である中国における渇水による生産減が懸念されている。中国需要が復調すれば世界需給は供給不足となりうる。 ニッケルは昨年、LMEにおいて1年間で40%以上価格水準を落とした。米中経済の不透明感なども押し下げ要因となったが、供給過剰見通しが重しとなったとみられている。需要は電池向けなどで拡大するとみられるが、インドネシアで大増産が継続する見通し。LME相場は下げ止まったが、引き続き上値は抑えられそう。 需給指標として用いられるLME在庫にも関心を持ちたい。鉛・亜鉛相場を昨年年初から春先まで押し上げた材料だ。鉛と亜鉛はともに低水準から脱したものの、今年も他の金属含め在庫水準の高低、増減、出荷待ち量(キャンセルワラント)には注意しておきたい。鉛や亜鉛はLME在庫が低水準となった際、需給ひっ迫感によって、現物価格が先物価格を上回るバックワーデーションも生じた。 LME上場品種以外では、マグネシウムやシリコンは昨年、需給緩和により低空飛行となった。マグネシウムは今年も「需要低迷+生産増」、金属シリコンも「需要増+生産大幅増」の構図が少なくとも春先までは継続すると見通されている。