井上拓真（右）に判定勝ちし、飛び跳ねて喜ぶ堤聖也（中央）

◇13日、ボクシング　7大世界戦＋那須川天心　第1日（東京・有明アリーナ） 　メインイベントのWBAバンタム級タイトル戦は同級2位・堤聖也（28）＝角海老宝石＝が王者・井上拓真（28）に12回判定3―0で勝ち、新王者となった。 ◆日南まみ＆赤城ありさ、ラウンドガールを務める【写真】 　判定結果が告げられると、堤の顔が大きくゆがんだ。ベルトを持って声にならない叫びを上げ、大粒の涙がこぼれる。12年前の高校総体準決勝で敗れて以来の井上拓との再戦。大学まで続けたアマで一度も日本一になったことがない男が当時からトップだった同い年の王者を倒した。 　「拓真に勝ったのは本当にうれしいです。拓真がいなかったらプロにきていないと思う。高校からずっとリベンジしたいって思って…。拓真からしたら1試合したやつ以上でも以下しかない。12年ずっと片思いして、追いかけて追いかけて追いついて、越えることができた。最高です」 　人生をこめたようなボクシングだった。勝負を分けたのは10回だった。序盤に右フックで井上拓をロープに飛ばしてダウンを奪い、場内を熱狂させる。以降は守備的に戦ってもポイントを得られる局面だったが、堤は再開後も攻め手を全く緩めない。猛攻に次ぐ猛攻で相手を押しまくり、以降の流れを決定づけた。 　濃いボクシング人生を歩んできた。日本一になれなかったアマ時代。国内トップと戦い続けたプロデビュー後。そして、昨年12月には穴口一輝さんとの大激戦。4度倒して競り勝ったが、試合後に穴口さんが意識を失いそのまま亡くなるリング禍の当事者となった。 　この日は穴口さんについて、「報告はしたいです。（それ以上）ここで言うことじゃないと思います」と答えた。しかし、6月には穴口さんのことを今も毎日思い出して考えると明かしていた。 　リングでの堤には背負った全てが表れていた。「ラウンドごとに取った取られたとか全く考えていなかったです。1ラウンド1ラウンド、全力で戦った試合でした」。全力で戦い続けた堤はこの日、世界のベルトを手にした。