くりぃむしちゅー「有田哲平」が53歳にして「ボケの呪縛から解放された」…ラーメン番組で“食レポなし”の自然体ロケを貫いた理由
「生活指導の先生に、恋愛相談するみたいな感じ」
新たなラーメン情報を聞き出しては、週3~4杯ペースで通うように。いつの間にか、赤池さんのことを親しみを込めて「先生」と呼ぶようになっていた。 「ラーメンに恋してしまったというか。“うわ! すげぇ美味かった!”みたいな分かりやすい感動じゃなくて、家に帰ってしばらくすると、“あのラーメン、めちゃくちゃ美味かったなぁ”ってしみじみと噛みしめる感動。忘れられないから、また通うしかない。先生にそのことを伝えると、“うん。ラーメンが好きだという証拠です”って言われて。生活指導の先生に、恋愛相談するみたいな感じですよ」 何歳になっても新しくハマれるものがある。半面、ハマるには時間も労力もかかる。歳を重ねれば重ねるほど、新しいものにハマることは難しくなるかもしれない。 「自分の生活サイクルが固まってくると、腰が重くなると思うんですよ。でも、ガラッと人生を変えてみようってわけじゃない。自分の中に少しだけあったものを深掘りするだけでいいんじゃないの? って。僕が、いきなりボルダリングを始めてハマれるかっていったら、そうはならなかったと思いますよ。勝浦タンタンメンという興味の種みたいなものがあって、それが育っただけ」 ときめきは、自分の過去のどこかに埋まっている。 「思い切って新しいことを始めなくてもいいんです。ちょっと掘ってみる程度でも、僕はいいと思う。僕なんて、ラーメンを食べたいがあまり健康にも気を遣うようになって、ランニングをするようになったんですから(笑)。小さいことが大きな変化を生むことだってあるわけです。散歩が好きだったら、いつもより遠めに散歩するとか、ちょっとずつ深くしていけばいい。そうすると、僕が先生に出会ったみたいに師匠みたいな人に出会える。もしかしたら、それは人ではなくて、本かもしれないし、動画かもしれない」
「一杯をかみしめたいから、余計なことはしたくなかった」
「有田哲平の休日はラーメン連食」では、先生である赤池さんとともに、「Ramen FeeL」(青梅)「船越」(桜上水)といった話題の店をめぐる。有田さんから「ラーメン番組ができるのであればBSでやりたい」とリクエストしたと明かす。 「僕は、BSの番組がめちゃくちゃ好きなんです。『ビルぶら! レトロ探訪』、終了してしまったけど『~日本全国~桂宮治の街ノミネート』とか、肩ひじ張らない番組が好き。ラーメンを楽しむんだったら、オンのときの自分とは違う、オフ感のある番組にしたかったんですよね」 その言葉通り、番組で映し出される有田さんの姿は、ほとんど「素」だ。私服で行列に並び、食レポもしない。支払いも自費。遠目からカメラで撮影する様子は、まるで「はじめてのおつかい」だ。 「一杯をかみしめたいから、余計なことはしたくなかったんですよ。店主の方とコミュニケーションを取るなんて普段はやらないから、黙って席に座っているだけ。お店の中では、先生の方が話しているくらい。こういう番組って、今の僕の気持ちとなんか合っているところがあって。芸人としての手応えはまったくないんだけど、BSファンである自分からしたら理想的な番組。夢のような空間でした。ボケもせず、リアクションもせず、ただ美味しいラーメンを食べるだけっていう(笑)」 近年、有田さんは自身のバックボーンをオープンにする機会が少なくない。「有田と週刊プロレスと」(Amazonプライムビデオ)、「賞金奪い合いネタバトル ソウドリ~SOUDORI~」(TBS系)の一コンテンツ「解体新笑」などでは、自身を涵養した思考が紐解かれる。見方によっては、「有田哲平の休日はラーメン連食」も、そんな有田さんのこだわりが垣間見える番組かもしれない。 「等身大の自分をつらつらと偉そうに語ることは、20代の頃からずっとやっていたんですよ。ただ、オンでは誰も求めていなかった。20代の頃だったかな。恋愛討論をするような番組に、若手芸人の一組として呼ばれたので、真面目に恋愛について語った。次からは、呼ばれなくなりました(笑)。僕たちに求められていたのは、ボケなんですよね」 ロケに行っても、ボケることばかり考えていたという。 「有名な観光スポットを訪れているときも、“なんかボケられるものないかな”ってキョロキョロしちゃって。その場を楽しむ余裕なんてない。だから、訪れたのに思い出がないんです。普通に楽しんだり、好きなことをするって発想がなかった」