（ブルームバーグ）： 米共和党のトランプ前大統領は12日の選挙集会で、残業代への課税を撤廃すると公約した。10日夜に行われた米大統領選討論会で安定感を欠くパフォーマンスの後、大衆に訴える新たな減税案で巻き返しを図る考えだ。

トランプ氏はアリゾナ州トゥーソンで開かれた集会で、「残業代に対する税金は全て廃止する」と述べ、「残業する人々は、わが国で最も勤勉に働く市民であり、ワシントンではあまりにも長い間、彼らに目を向ける人はいなかった」と指摘した。

残業代への課税が廃止されれば、週40時間を超える時間外５割増賃金の価値が高まる。これは、トランプ氏の支持基盤に欠かせないブルーカラー労働者に投票を促す可能性がある。

２日前の大統領選討論会では、トランプ氏が安定感を欠くパフォーマンスで、識者や世論調査結果は民主党候補のハリス副大統領に軍配を上げた。経済手腕についてはトランプ氏の方がハリス氏より評価が高いことを世論調査は示しているが、トランプ氏の盟友の多くは、同氏が討論会で経済に照準を絞る機会を逸したと指摘している。

トランプ氏はここ３カ月間、選挙で鍵を握る有権者層に照準を定め、減税案を次々と打ち出してきた。激戦州の一つネバダ州の飲食店やホテル、カジノで働く人々にアピールするため、接客業のチップ収入への課税全廃を提案。高齢の有権者層の支援に向け、社会保障給付金課税を全て廃止したい考えも示している。

同氏は集会で住宅ローン金利を２％まで引き下げる考えも表明した。ただ、同氏が大統領に返り咲いても、金利を制御することはできない。

大統領は住宅ローン金利水準のベースとなる政策金利を決める米連邦準備制度理事会（ＦＲＢ）に対して限られた影響力しか持たない。ＦＲＢは来週、連邦公開市場委員会（ＦＯＭＣ）会合を開く予定で、金利を小幅に引き下げると予想されている。

米国の住宅ローン金利は2023年２月以来の水準まで低下した。フレディマック（連邦住宅貸付抵当公社）の12日の発表によると、30年物固定ローンの平均金利は6.2％で、１週間前の6.35％から低下した。