【熊本市役所 動き出す新庁舎㊤】「桜町」へ移転建て替え、まちなか再開発の起爆剤なるか 跡地利用に高まる関心
「人流の大きな変化や市街地再開発のきっかけになるだろう」。熊本市の大西一史市長が市議会に中央区桜町への市役所本庁舎移転案を提示した24日、市中心市街地の商業組合などの関係者からは好意的な意見が聞かれた。 新庁舎の建設予定地は、2019年秋に開業した商業施設「サクラマチ クマモト」の隣接地。桜町案が実現すれば3年半もの間、NTT西日本の空きビルが立っていた景色は一変することになる。 サクラマチを運営する九州産業交通ホールディングスは市庁舎移転について「隣接する施設として、市との連携を図りたい」と前向きに受けとめる。 中心市街地では、完成から長い時間が経過したビルも目立つ。再開発への期待は大きく、肥後銀行と地方経済総合研究所(熊本市)は、建築面積330平方メートル以上のオフィスやホテルなど築40年超の74棟が建て替えや新築をした場合、約4千億円の経済効果があるとはじく。 特に、現庁舎跡地の利活用は早くも注目が集まる。熊本商工会議所の久我彰登会頭はこの日、「跡地には稼ぐ力を持ち、熊本に収益をもたらす施設が望ましい。(中心市街地の)街区ごとに再開発が広がっていくような展開を期待している」とコメントした。
建物の高さ制限や容積率などを緩めて民間ビルの建て替えを促す福岡市の再開発促進事業「天神ビッグバン」になぞらえ、活性化の起爆剤を求める声も。上通商栄会の田原誠也会長は「市庁舎移転で人流が南側に傾く懸念はあるが、『熊本まちなかビッグバン』が始まれば、全体が活気づくかもしれない」と期待する。 田原会長は、九州で進出が相次ぐ外資系の高級ホテルを誘致すれば、回復するインバウンド(訪日客)や富裕層を取り込めるとみる。台湾積体電路製造(TSMC)の菊陽町進出を機に、台湾からの来訪者がグレードの高いホテルを求めるのをよく耳にするからだ。 市庁舎建て替えの早期実現を要望してきた熊本経済同友会の笠原慶久代表幹事も「市は、周辺地域と一体となったまちづくりにスピード感を持って取り組んでもらいたい。経済波及効果の実現に向け、経済界もしっかりと後押ししていきたい」とした。 市庁舎の移転方針を受け、再開発の機運が高まる一方で、市中心市街地には空きテナントも目立つ。新型コロナウイルス禍が一段落して入居は回復傾向だが、賃料が高い大型物件には及んでいないとの指摘もある。
下通繁栄会の猪毛尾彰宏会長は「人口減少が進み、中心市街地にとって難しい状況が続くことには変わりない」と指摘。「庁舎移転を見据え、回遊性やにぎわいを生む新たなまちづくりのビジョンが重要になる」と見通した。(立石真一) ◇ 熊本市役所の建て替え計画は、桜町に本庁舎を移転し、中央区役所を分離して建設する方向で動き出した。市中心市街地の街並みや人の流れに加え、役所を訪れる市民の利便性も変化が予想される。県経済や市民生活の影響を考える。