与野党〝連携〟で歳出圧力の高まり必至、協力の代わりに政策受入も 予算・税制改正日程も窮屈に
27日投開票の衆院選で与党が大敗したことで、石破茂政権の経済政策運営は混迷を深めつつある。目下の懸案は、経済対策の策定と令和6年度補正予算の編成だ。政権が速やかにこれを成立させるには、野党に協力を仰ぐ代わりに、彼らの政策の一部を受け入れざるを得ない。来夏には参院選も控える中で、歳出圧力が高まるのは必至だ。 【ひと目でわかる】衆院選 与野党の獲得議席 「取り入れるべきは取り入れることに躊躇があってはならない」。首相は選挙から一夜明けた28日の記者会見で、経済対策と補正予算に野党の公約を盛り込む可能性について言及した。 目玉となるのが、衆院選で各党が重点的に訴えてきた物価高対策だ。 与党は低所得者世帯への給付や自治体向けの交付金の拡充を訴えてきた。首相は28日、中小企業や農林水産業への支援、学校給食費への支援にも言及した。すでに11兆円超の予算を使った電気・ガスやガソリン価格の抑制策についても、何らかの形で続ける意向だ。 一方、立憲民主党は「分厚い中間層」の復活を目指し、最低賃金の1500円以上への引き上げなどを掲げる。中低所得者の消費税の一部を税額控除し、控除しきれない分を給付する「給付付き税額控除」の導入も主張する。 日本維新の会は消費税、所得税、法人税の減税により消費や投資の活性化を目指す。国民民主党は消費税減税やガソリン税を一部軽減する「トリガー条項」の凍結解除を盛り込んだ。 首相は補正予算について、一般会計の歳出が13兆円を超えた5年度の補正を上回る規模を目指す考えだ。早々に規模が示された一方で、選挙戦を通じて、財源確保や歳出改革を巡る議論は深まらなかった。 来夏の参院選を意識すると、各党は有権者を引き付けるような歳出拡大を伴う政策に偏りやすくなる恐れがある。結果的に国民負担に跳ね返ってきかねない。 政府・与党は6年度補正予算に続き、年末にかけて令和7年度の税制改正や当初予算編成も予定する。厳しい国会運営が予想される中で、11月には首相の外遊も入る。財務省幹部は「予算審議の日程はかなり窮屈になる」と危惧している。（米沢文）
