延長までもつれた白熱のゲームは、終盤に得点を重ねた大津が熊本国府を下して6連覇を達成
6月5日、令和6年度全国高校サッカーインターハイ(総体)熊本予選の決勝がえがお健康スタジアムで行われ、延長線の末に熊本国府を3-2で下した大津が6大会連続の全国高校総体出場を決めた。 【フォトギャラリー】大津 vs 熊本国府 30℃を超える暑さの中で始まったゲーム、序盤は早い出足でボールに対してプレッシャーをかける熊本国府が奪ってからの大きな展開で押し込み、3分に右からのFKに岩﨑祷真が頭で合わせるが枠を捉えることができず。対する大津は、的確なポジショニングや足元の技術の高さを生かし、細かいパス交換で相手のプレッシャーを剥がしながら徐々に前に運ぶ状況を増やしていく。熊本国府のクリアボールも高い位置で回収することで、相手陣内でボールを保持するようになったが、舛井悠悟が右からクロスを入れた8分の場面はDF新屋颯波が体を投げ出してブロックするなど、熊本国府も寄せの早さと球際の強さで跳ね返す。 しかし10分、大津は右サイドを破った舛井が嶋本悠大へつなぐと、嶋本は斜めにドリブルを仕掛けて深くえぐりマイナスの折り返し。これに対してきっちり動き直した兼松将が右足を振り、先制に成功した。追う展開となった熊本国府だが、その後も出足の良い守備を継続したことで追加点は与えず、奪ってからの早い切り替えで大津の背後へ配球。18分には右から古川慎恩が長い距離をドリブルで運び、30分には岩﨑がクロスを入れるなど大津ゴールに迫る。しかし大津もGK坊野雄大、CBの五嶋夏生、村上慶ら守備陣がきっちり抑え、1-0で折り返した。 迎えた後半、大津は立ち上がりの39分に舛井、山下景司、兼松、嶋本とつなぎ、最後は中村健之介が狙うビッグチャンスを迎えるが枠をとらえきれない。しかし、以降、熊本国府がペースをつかんでサイドから形を作り始めると、終盤まで一進一退の展開。それでも、リードしている大津も前線の選手が自陣ゴール前まで戻って身体を張るなど、お互いに次の1点は生まれまま時間が進み、大津が逃げ切るかと思われた。 だが、大津にとっては「クリアボールが相手に渡ったり、リスキーなバックパスがあったり、失点の卵が何度かあった」(山城朋大監督)ことが遠因となり、アディショナルタイムにゲームが動く。70+4分、熊本国府は左の古川からのクロスをうまく相手の背後に入った岩﨑が頭で合わせて土壇場で追いつき、ゲームを振り出しに戻した。 延長前半は、追いついた勢いの熊本国府が出足の良さを生かすが決定的な場面は作れず、一方の大津も細かく動かしながら突破を図るものの途中で引っ掛け、前線へ好パスが出た80分の場面も合わないなど、得点は生まれず。 だが延長後半、大津は交代出場していた曽山瑚白や溝口晃史、南平晴翔らが積極的に仕掛けて局面打開を図ることで再び流れを引き寄せると、86分、溝口からボールを受けた嶋本がつなぎ、ゴール前でボールを受けた山下が落ち着いて相手をかわし、右足で右隅に決めて勝ち越し。さらに87分には、岩中翔大から山下を経て嶋本が流し込み追加点。熊本国府の厳しい対応を受けて本来の力を発揮できる場面の少なかった中心選手2人が最後の最後に試合を決める仕事をして、粘る熊本国府を退けた。 「プレミアリーグでシビアな戦いを繰り返している成果が出ているとは思いますが、前半に先制して以降は、相手の距離感でサッカーをする時間が長くなってしまった。やるべきことができないとこういう苦しいゲームになる。連戦でも出足の落ちなかった熊本国府さんに学ぶところが多く、相手をしっかり見て判断することが大事だと、改めて気づかされる試合になったと思います」と山城監督。 勝ち越し点を挙げた山下は、「自分を信じて監督が交代させずに残してくれたので、点を取って勝つことができてよかった」と安堵の表情を見せたが、昨年のインターハイで市立船橋にPKで敗れた悔しさは消えていない。「1年の時から、先輩たちがいる中でゲームに出させてもらってきて、結果を残す責任があると思う。大事な場面で勝負を決める得点ができたら、自分が試合に出ていたことで出られなかった先輩たちも納得してもらえると思います」と、いまだ届いていない頂きを見据える。 (文・写真=井芹貴志)