河合優実、『ナミビアの砂漠』各国での公開決定に喜び!山中瑶子監督の映画を「世界の人に知ってほしい」
第77回カンヌ国際映画祭で国際映画批評家連盟賞において、女性監督として最年少受賞に輝いた山中瑶子監督の『ナミビアの砂漠』。本作の公開記念舞台挨拶が9月7日にTOHOシネマズ日本橋で開催され、河合優実、金子大地、寛一郎、山中監督が登壇した。 【写真を見る】河合優実、シックなブラックのワイドパンツコーデにピンクのリップが映える 19歳で発表した『あみこ』(18)で史上最年少でのベルリン国際映画祭出品をはたした山中監督と、同作に衝撃を受けて、監督に「いつか出演したいです」と直接伝えに行ったという河合のタッグが実現した本作。やり場のない感情を抱いたまま毎日を生きている21歳のカナ(河合)が、自分の居場所を探してもがく姿を描く。 上映後の会場から拍手を浴びて登場した河合は、「この日をドキドキして迎えました。皆さんに早く観てほしいと思っていた映画です」と挨拶。「映画自体も決して大規模なわけでもないですし、撮影期間もそんなに長くはなかった。そういう環境のなかで、山中監督のもといろいろな人が自由に意見を出し合いながら作っていた映画。皆さんの感想を受け取るのが、自分も楽しみです」と豊かな撮影期間を振り返りながら、観客の反応を期待していた。 山中監督は「かなり限定された個人を通して、いまの日本で生きている空気感や、普遍的なところも考えていた。自由に作らせていただいたんですが、そこに皆さんが共闘して、すごくいい映画になったなと思っています」とスタッフやキャスト陣に感謝。「TOHOシネマズでかかる映画を作っていたつもりはなかった」と大きなスクリーンを見て微笑みながら、「それってすごく豊かなこと。これから、いろいろな人と出会っていってもらえるとうれしい」と映画を送りだす心境を明かした。 カナというエキセントリックとも思える主人公を演じた河合は、「カナのおもしろさを楽しむ映画でもあるけれど、同時に自分の話だと思ってもらえるようにもしたかった」と役づくりへの想いを吐露。「新宿や渋谷で絶対にすれ違っているし、見たことがあるような女の子像。それと同時に、カナは暴れるし、嘘をつくし、意地悪だし、気分屋だし。そういったキャラクターとしての魅力の、どちらも入れ込みたいと思っていました。カナと私は同年代ですし、カナの気分や体から発しているエネルギーは、街中や学校でも感じてきたものから集めていたのかなと思います」といまを生きる実感も込められているという。 1人の時間を過ごす姿もリアリティを持って描かれている映画の内容にちなみ、「1人の時間をどのようにつぶしているか?」という質問も投げかけられた。金子は「TikTokを永遠に観ちゃいますね。あれはめちゃくちゃおもしろい。あれ!気づいたら、こんな時間!みたいなことになる。シベリアンハスキーと赤ちゃんとか、大型犬と赤ちゃんの組み合わせの動画を真顔で観ています」と笑顔。「お風呂じゃなくてシャワーが好き」だという寛一郎は、「シャワーに当たり続ける。毎日じゃないですけど、たまにそれで30分くらいボーッとしている時があります。いい時間なんですよ」と独特のお気に入り時間を口にした。 「ボーッとすることが苦手。いつもなにかを考えたり、思い出したりしてしまう」という山中監督は、「無理やりボーッとするためにスイカゲームをやっています」とにっこり。河合は「私も動画を観ることがある。日本人の男性の方で、単身で(海外に)渡って美容師をやっている方がいて。ドレッドやコーンロウなど、髪を編み込んでいる。その技術が見ていてすごく気持ちがいい。すばらしい技術。そのチャンネルをめちゃくちゃ観ています」と楽しそうに明かしていた。 ステージでは、アメリカ、カナダ、フランス、台湾、韓国での公開が決定したことも発表となった。河合は「山中さんの映画を世界の人に知ってほしいという気持ちもある。どういうふうに観てもらえるのか、すごくワクワクしています」と感激しきり。改めて「自分を主人公に重ねて、自分ごととして観てくださってもいい。まったくの他者として、客観的に観てくださってもいい。カナの個人的な物語を楽しんでもいい。日本の現代社会が透けて見える方もいるかもしれない」とどのように観てもらってもうれしいと語り、「皆さんが受け取ったエネルギーを反射して、どんどん吸収して、また映画自体がステキなモンスターになっていくような映画になったらすごくうれしい」と希望を込めた。 山中監督は「私はいま27歳ですが、生まれてからずっと日本は不景気だなとか、日に日におかしなことになっているなと顕著に感じる」としみじみ。「年下の河合さんやスタッフの方たちと脚本を書いていると、みんながそれを当たり前の肌感として感じているという話を聞いて、そういう部分を反映させていた。情報量や物質量も多い東京は、20歳前後で独り立ちしなければいけないタイミングとして生きる街にしては、あまりにも混沌としている。私もそういうのに疲れていたし、自分の感情をないがしろにしてしまったことのツケが回ってきているなという実感があって、本作をつくった。大変な人はいっぱいいると思うんですが、ちょっとでもさわやかな気持ちになれたらいいなと思ってつくった」と映画に込めた想いを語り、会場から拍手を浴びていた。 取材・文/成田おり枝