「カラテカ」矢部太郎をベストセラー作家に導いた故つかこうへいさんの言葉
「幕末純情伝」の2年後、また新橋演舞場でつかさんが舞台をやることになって、そこにも呼んでいただきました。今度は黒木メイサさん主演の「飛龍伝2010」。この作品でも、またすごく良い役をやらせてもらいました。ただ、この作品が始まる前に、つかさんが体調を崩されて、結果、これが最後の作品になってしまいました。 実は「飛龍伝」の後にも、言っていただいていたことがあったんです。次は「蒲田行進曲」をやろうと。僕がヤス役で。実際、台本も送ってきてくださって。ただ、それが実現することはありませんでした。できなかった分、いつまでも思いがあるというか。今でもつかさんがずっと心にいるんです。 恩返しですか…。もういらっしゃいませんので、舞台でご一緒して、何かをお見せすることはできない。あるとしたら、全員反対していた中、つかさんだけが僕を押してくださって、その結果、僕にとっては大きなものをいただいた。この先「やっぱり矢部はダメだな」となると、それは、ある意味、あの時のつかさんの判断が間違っていたみたいになってしまう。そうならないように、むしろ「さすが!つかこうへい」になるよう、僕が大きくならなきゃと思っています。 ま、僕なんかがそんなことをしなくても、すごく大きな方なんですけど(笑)、さらに、さらに、そうなるように精いっぱい頑張りたいと思います。 (取材・文/中西正男) ■矢部太郎(やべ・たろう) 1977年6月30日生まれ。東京都出身。東京学芸大学除籍。97年、高校の同級生だった入江慎也とお笑いコンビ「カラテカ」を結成する。日本テレビ系「進ぬ!電波少年」の企画などで5つの言語を習得。2007年には気象予報士の資格を取得する。俳優としても独特の存在感を放ち、故つかこうへい氏が手掛けたの舞台「幕末純情伝」(08年)、「飛龍伝2010」(10年)にも出演した。昨年10月に出したコミックエッセイ「大家さんと僕」は20万部を超えるベストセラーになった。 ■中西正男(なかにし・まさお) 1974年大阪府枚方市生まれ。立命館大学卒業後、デイリースポーツ社に入社。大阪報道部で芸能担当記者となり、演芸、宝塚歌劇団などを取材。2012年9月に同社を退社後、株式会社KOZOクリエイターズに所属し、芸能ジャーナリストに転身。ABCテレビ「おはよう朝日です」、フジテレビ「バイキング」などに出演中。