橋の半分がパブリックスペース。OMAが仏・ボルドーで手がけた幅44mの〈シモーヌ・ヴェイユ橋〉とは?
「この橋はコマーシャリズムを優先した施設ではなく、巨大なヴォイド(空隙)なのです。みんなが自由に使い途を考えられるように、あえて何もない場所を造りました」と担当者のOMAパートナー、クリス・ヴァン・ドゥインはいう。 「でもこれだけの大スケールで何もない広場を造るのは勇気のいることです。普通ならベンチを置いたりグリーンを植えたりモニュメントを設置したりするでしょう」(クリス・ヴァン・ドゥイン)
両岸の公園もOMAが設計している。左岸(南側)にはもともと川に沿って高速道路が通っていたのだが、これを内陸側に迂回させ、橋の下に公園を作った。道路の段差は残して、川を眺められる大きなベンチにしている。右岸(北側)には既存のアリーナに続く大きめの公園にした。こちらではなだらかな丘など、ランドスケープとなるような構造物をデザインしている。その中には橋を建設する際に出た余りの材料をリサイクルしたものもある。 「子どもの遊び場もいいのですが、それだけだとつまらない。子どもも大人も遊べる場所にしたいと思いました」(クリス・ヴァン・ドゥイン)
橋も公園も積極的に使う人のアイデアを喚起するためにあえて「何もない場」を用意している。見せるためではなく、使う人の創造力を刺激する橋なのだ。
シモーヌ・ヴェイユ橋
フランス、ボルドーのガロンヌ川、フロワラック地区とベグル地区を結ぶ。ローマ時代の建物も残るボルドーの南端に位置し、遊歩道は中心部を眺められる橋の北側にある。両岸にはOMAの設計で公園が整備される。
text_Naoko Aono editor_Housekeeper, Keiko Kusano