『若草物語』が出版から150年経っても愛される理由 フェミニズムの観点から進む再解釈
日テレドラマ『若草物語』で押し出された対決構造
近年ではフェミニズムの観点から『若草物語』の再解釈が進み、人気が再燃している。映画『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』では、原作者オルコットが小説の印税によって生涯独身を貫いたことを考慮に入れ、原作ではジョーの結婚で幕を下ろすところをどちらとも取れる結末に変更していた。それにより女性に自立を促すメッセージ性が強まった。 現在放送中のドラマ『若草物語―恋する姉妹と恋せぬ私―』では、舞台を現代日本に移し、主人公を脚本家志望で年齢も20代後半の女性に変更している。そして、悪役らしい悪役が登場せず、自分の価値観を問いただす原案小説とは打って変わって、大衆の需要を理由に恋愛至上主義を正義と掲げる大物脚本家との対決構造を押し出している。これにより日本におけるフェミニズムの強度が示される作品となるだろう。 『若草物語』は「社会化すること」と「社会に抗うこと」という相反するテーマを含有する作品だ。このところジェンダー規範というテーマの扱い方で注目を集めているが、思想の潮流が変わっても本作は読者を魅了し続けるだろう。ジョーのように価値観の板挟みの中で格闘する主人公はいつだって必要とされているのだから。 参考 斎藤美奈子『挑発する少女小説』(河出新書)
倉田シウマイ