「メルセデスベンツ」には今も神通力があるか? かつて「高級」の代名詞、いまは?
クルマに詳しくない人でも、「ベンツ」ときけば、「高級車」というイメージを持つだろう。ただ昨今は、トヨタの高級ブランド「レクサス」が浸透するなど、かつてよりも、国産車において高級車として認められるクルマが増え、また価値観の変化などによって、高級車として求められる要素も多様化してきている。はたして、「メルセデスベンツ」には、いまも神通力があるのだろうか。 【画像ギャラリー】この時代でもこんなイケイケの高級車を発表!!メルセデス・マイバッハSL680モノグラムシリーズ(13枚) 文:立花義人、エムスリープロダクション/写真:Mercedes-BENZ
バブル景気や外国製品への憧れによって「ベンツ」が高級車の代名詞に
メルセデスベンツが高級車の代名詞として定着したのは80年代だろう。この頃の日本は、経済成長が著しく、特に80年代後半はバブル景気によって中間層の所得が爆上がりした。国産車の品質も技術革新によって急激に進歩していたが、同時にステータス性や外国製品への憧れも手伝い、メルセデスの小型モデル「190E」がよく売れていた。 「ベンツ一台が買えるぐらいの値段」という慣用句がよく用いられたのも、メルセデスが高級車と認識されていたからだろう。メルセデスのクルマは、国産車よりも高い値段であることに加え、高級車に求められる、クルマの大きさや豪華な内装、目立つデザインという要素を満たしていた。もちろん、メルセデスの「本当にいいものを、きちんとお金を出して選ぶ人のためのクルマづくり」という本質が理解された結果でもあるだろう。これは今でも変わらないし、クルマ好きなら一度乗ればそのつくりのよさに驚き、感動するはずだ。
Aクラスの登場など、時代の変化にもしっかりと対応している
しかしながら、昨今は、当時とはライフスタイルや価値観が大きく変わってきている。クルマに求められる価値も、ボディサイズや豪華装備というだけでなく、環境性能や最新のテクノロジーという要素も重視されるようになり、またそれぞれの個性に合ったデザインも求められるようになってきた。 そのため、昨今は、「高級車」という考え方そのものがあまり意味をなさなくなってきているように思う。ビッグパワーで低音を響かせながら走るパワフルなガソリン車より、音もなく静かに走るBEVのほうを好ましく思う人は少なくない。 ただメルセデスは、そんな時代の変化にも、しっかりと対応している。Aクラス(1997年登場)の登場は、まさにその象徴だろう。 もともとメルセデスは、富裕層のためのクルマをつくってきたというよりも、高品質で高性能、安全なクルマを目指し、本物志向のユーザーのためのクルマづくりを理念としてきた。昨今は、あらゆる面で技術革新が進んだことで、小型車であっても、その理念を反映させることができる。 メルセデスはまた、最近のデザインを取り入れたインテリアデザインによって、高級車ブランドの中でも特筆して未来的なイメージも強めており、さらにはBEVのEQシリーズもラインアップを一気に増やしたことで、「高級電動車」のイメージもしっかり確立させている。
今後も、高級車のイメージを牽引していく役割を担っていく
日本市場では、レクサスのブランディングが成功していることもあり、現在はそちらを高級車の代名詞として挙げる人が多いかもしれないが、メルセデスブランドは変わらず安全性と高品質を理念としており、実際にメルセデスの最新機能や安全性は、いまも高く評価されている。 保守的でお堅いブランドと思われがちなメルセデスだが、実は時代の変化を敏感に察知しながら、柔軟にクルマという乗り物自体の価値観を変化させることのできるメーカーなのだ。メルセデスは今後も、高級車のイメージを牽引していく役割を担っていくことだろう。