グーグルの元CEOエリック・シュミット氏。

グーグルの元CEOエリック・シュミット氏は、AI（人工知能）の開発には膨大なエネルギーが必要だが、もっと開発を進めるよう呼びかけた。 AIモデルは巨大なデータセンターを必要とし、二酸化炭素排出量の削減目標を脅かす。 シュミット氏は、こうした目標はどっちみち「達成できないだろう」とした上で、AIに問題を解決させるよう提案した。 グーグルの元CEOエリック・シュミット氏は、気候変動関連の目標は高すぎてどっちみち達成できないので、わたしたちはAIインフラに全面的に投資すべきだと語った。 AIブームは、AIモデルの訓練や動作に必要な計算能力を提供するデータセンターへの投資に拍車をかけた。しかし、データセンターは膨大な天然資源を消費するため、開発の急増には代償が伴う。マッキンゼーによると、2023年には17ギガワットだったデータセンターの年間電力消費量が2030年までに35ギガワットに増える見込みだ。 アメリカのバイデン政権は、2035年までに電力部門を"カーボンニュートラル"にし、2050年までにアメリカ経済を"ネットゼロ"にするという野心的な目標を掲げている。ただ、AIのエネルギーに対する劇的なニーズは一部企業の幹部を化石燃料へと向かわせていて、"ネットゼロ"の目標を脅かす可能性もある。 シュミット氏の今回のコメントは、10月初めにワシントンD.C.で開かれたAIサミットで、未来のAIに対する考えを同氏が述べる中で出てきたものだ。2001年から2011年までグーグルのCEOだったシュミット氏は、アメリカの人工知能に関する国家安全保障委員会（NSCAI）の委員長を務めたこともある。 シュミット氏はサミットで、AIが環境に与える負の影響を抑制する方法はいくつかあると話した。より性能の良いバッテリーや送電線を使用してデータセンターを建設するのもその1つだという。ただ、AIの成長はこうした予防策を最終的には上回るだろうと同氏は考えている。 「その全てがこの新たな技術の莫大なニーズに飲み込まれるだろう」とシュミット氏は聴衆に向かって語った。 「なぜなら、これは普遍的な技術であり、異質な知性の到来だからだ… わたしたちはその使い方において間違いを犯すかもしれないが、（環境を）守っていたら到達できないと断言できる」 プレゼンターがシュミット氏に、環境保護の目標を無視することなくAIのエネルギー需要を満たすことは可能かどうか重ねて尋ねると、シュミット氏は「わたしたちはそのために組織化されていないし、気候変動関連の目標はどっちみち達成できないだろう」と考えていると答えた。 「確かにこの分野のニーズは問題になるだろう。でも、AIを抑制してうまくいかなくなるよりも、 わたしはむしろAIが問題を解決する方に賭けたい」とシュミット氏は話した。 同氏は2022年、AIを搭載したドローンを開発する防衛企業ホワイト・ストーク（White Stork）を設立。今年4月のスタンフォード大学での講演では、ウクライナでの戦争が自分を「武器商人」に変えたと語った。また、ホワイト・ストークは「こうしたロボットによる戦争のために、複雑かつ強力な方法でAIを使用する」とも述べた。