ビットコインETFで、新たな権力闘争が始まる
スイスで開催された世界経済フォーラム、いわゆる「ダボス会議」で、大手金融機関による暗号資産(仮想通貨)コミュニティが存在感を示したことは、この業界に内在する葛藤を浮き彫りにした。 一方では、ビジネス界に受け入れられたいという願望があり、もう一方では、ビジネス界と関わることで、暗号資産のディスラプティブで反抗的な精神が損なわれるのではないかとの懸念がある。
TradFi(伝統的金融)の台頭
2024年は伝統的金融(TradFi)が台頭する年になりそうで、その葛藤は特に顕著なようだ。米証券取引委員会(SEC)がビットコインETF(上場投資信託)を承認したことで、ブラックロックやフィデリティ(Fidelity)のような巨大資産運用会社や、ゴールドマン・サックスやJPモルガンのような巨大銀行がビットコイン市場に参加する舞台が整った。 問題は、これら金融機関の参加がビットコイン自体のパワーダイナミクスに影響を与えるかどうかだ。これらの規制を受けた大規模な金融機関が関与し始めることで、検閲への抵抗や分散化に高い価値を置く「ビットコイン・マキシマリスト(至上主義者)」や「ディジェン(全財産を賭けてしまうような恐れを知らない暗号資産トレーダー)」は、ビットコインに対する影響力が低下するのだろうか? 例えば、ブラックロック、ゴールドマン、JPモルガンは、再生可能エネルギーでマイニングされたコインや、特定されていない個人や組織と過去に接点のない「クリーン」なコインのみを購入すると主張するだろうか? 彼らのビットコインに対する需要は、そのような方針がマイナーを始めとする他の関係者の行動を大きく変え、ビットコインそのものの構造を変えてしまうほど大きなものだろうか? 見極めるにはまだ時間が足りない。もどかしい回答かもしれないが、この疑問をめぐる予測可能性の欠如は、ビットコインの非常に分散型で多様なエコシステム内の複雑なパワーダイナミクスに起因している。 その複雑さはビットコインの魅力の一部であり、長期的に見れば、ウォール街の大手金融機関がビットコインを大きく変えることはできないだろうと私が考える理由でもある。