『Ever17』(PS2/DC)が発売された日。事故によって孤立した海中テーマパークからの脱出を目指す傑作アドベンチャー【今日は何の日?】
ネタバレを踏んでしまう前に遊んでほしい作品 いまから22年前の2002年(平成14年)8月29日は、プレイステーション2(PS2)、ドリームキャスト(DC)用ソフト『Ever17 -the out of infinity-』が発売された日。 【記事の画像(9枚)を見る】 『Ever17』はKIDから発売されたサスペンス系恋愛アドベンチャーゲーム『infinity』シリーズの2作目。当時は2017年5月1日から始まる物語を未来の出来事だと思っていましたが、2024年の現在ではリアルがゲームに追い越してだいぶ年月が経ちますね。 シナリオ原案と構成を務めるのは打越鋼太郎さん。ゲームならではのギミックを仕掛けるのが得意な打越さんの名を一躍有名にしたのが本作。物語に仕掛けられた謎と真相の評価が高く、いまなお名作のひとつとしてアドベンチャーゲームファンから語り継がれています。 物語は、水深17~51メートルの領域に建造されている海洋テーマーパーク“LeMU(レミュウ)”を舞台に、とある事故に巻き込まれて閉じ込められてしまった男女の脱出劇が描かれます。主人公は明るい性格の熱血漢である倉成武(くらなり たけし)と記憶喪失の“少年”のふたり。それぞれ攻略ヒロインが異なるのが特徴です。 ヒロインはクールビューティーの小町つぐみ、明るく活発な田中優美清春香菜、LeMUの案内係でAIプログラムの茜ヶ崎空、コンピュータに詳しく忍者の真似事をしている松永沙羅、“こめっちょ”というアメリカンジョークが好きな女の子の八神ココ在。沙羅が武編には登場しなかったり、ココは武編ではふつうに登場するのに少年編では少年にしか見えなかったりと、さまざまなところに違和感があり、最後にプレイする最終ルートですべての謎が解けるという展開です。打越さんの『極限脱出』シリーズや『AI: ソムニウム ファイル』シリーズの仕掛けに感動した人はぜひ本作もプレイしてみてほしいところ。 イラストレーターの滝川悠さんが描くキャラクターたちはかわいらしいですし、声優も浅川悠さんや下屋則子さん、植田佳奈さん、笠原弘子さん、望月久代さんといった人気どころが揃っていました。当時の筆者は、浅川悠さんが演じるクールなつぐみに恋をしていましたね。また、武と少年の声を演じている保志総一朗の名演も最高で好きでした。 音楽を手がけているのは『STEINS;GATE』などでも知られる阿保剛さん。どの曲もすばらしいですが、タイトル画面と、つぐみルートの重要なシーンで流れる『Karma』は名曲。筆者くらいのファンになるとこの曲のイントロが流れるだけで涙が出てきます……。 いまプレイするのであれば、個人的にはリメイクのXbox360版がおすすめ。Xbox360版はキャラクターが3D化されているのも特徴で、この部分に関しては技術が発展途上ということもあって賛否あったのですが、オリジナル版では少し中だるみをしていたシナリオが改良されていて物語にのめり込みやすくなっています。なお、3Dへの挑戦も『ROBOTICS;NOTES』や『パンチライン』といった3Dのアドベンチャーゲームにもつながっていくので、この挑戦も無駄ではなかったと思います。 最後に明かされる物語の仕掛けの評価が高い本作ですが、そこにいたるまでの各ヒロインのルートとエンディングもすばらしいです。とくにAIである空との恋愛を描いたルートのラストは、彼女の存在が虚構なのかそうではないのか、極限の状況で選択するようなものになっており、心に訴えてきます。 本作は2015年12月25日にPCダウンロード版が発売されましたが、DL販売サイトの“Magino Drive”が2022年9月30日にサービス終了して販売も終了しました。しかし、MAGES.の取締役である浅田誠氏のインタビューによると、『infinity』シリーズの移植とリメイクが進行中とのことなので、『Ever17』が現行機で遊べる日もそう遠くないのかも。ぜひ楽しみに待ちましょう。