紅白歌合戦に「90年代」の曲が増えている”納得の理由”…紅白出場者の基準に変化が起きていた
世代を超えて共有される90年代音楽
こうしたデータから、紅白のような大きな音楽イベントに「80年-90年代」が何かしらの意味で重要なキーワードになっている様子が見えてくる。 このことは、徒然研究室がX(旧Twitter)上に投稿した際に他のXユーザーから投稿されたエピソードが分析の一助になったそうだ。 以下がその投稿である。 ブラックビスケッツはうちの高校生が「この歌知ってる!本物はこれ!?」とはしゃいでいたのが印象的でした。他の人の歌ってみた動画とかで見てたのかも。 (徒然研究室(仮称)の投稿に対するみるみる3世さんの引用ポストより許可を得て引用) 「『80年-90年代』のヒット曲を当時聞いていた、直撃世代である親だけが歓迎したわけではなくて、その子どもの世代からもある程度評価されていたのではないか、という様子が見えてくるわけです。そしてここで重要なことがあります。 現在の高校生が生まれたのは2006年から2009年の間くらいですから、ブラックビスケッツさんらが活動していた90年代当時はまだ生まれていません。一方、日本人の平均初婚年齢は夫が約31際、妻が約30歳ですから、現在16歳の高校一年生の親御さんは、だいたい40代後半くらいということになります。その親御さんは、90年代後半当時は20歳前後の若者でした。 つまり、現代の若者は90年代には生まれていなくても、その当時学生や新社会人としてテレビで観たりCDを買ったりカラオケで歌ったりしていた親の青春時代の記憶を通じて、80年代や90年代の音楽文化を間接的に体験している可能性があるわけです」 親から子へ、「80年-90年代」当時の文化が伝わっているわけだ。徒然研究室氏が前述するように、親と子が同一の歌をカラオケや日常生活で共有することでその伝承が行われる。 それ以外にも、SNS上で流れてくる一般人による「歌ってみた」動画も流行の背景にあるという。現代のSNSでは、何かの拍子で拡散されるとそれがフォロワーではない人にまで波及し、加速度的にその“バズり”は大きくなっていく。そのSNSのメカニズムを根本に持つ背景は、現代の音楽ヒットに大きな影響を及ぼしていると徒然研究室氏は指摘する。 「ブラックビスケッツさんの『Timing~タイミング~』は、2021年デビューの日本のバンドKlang Rulerさんによってカバーされ、それがTikTokクリエイター、ローカルカンピオーネさんの投稿をきっかけにSNS上で話題となり…というプロセスを経て、2022年上半期にBillboard JAPANのTikTokチャートでトップとなっています。 こうした情報環境の出現を背景に、80年代や90年代の楽曲は『現代の若者』と『その親世代』、2つの世代を中心として幅広い人々が共有できるコンテンツとなってきているように思えます。CDが非常に売れていた時代でもあり、また令和のJ-POPに比べると覚えやすい楽曲が多いという側面もあるかもしれません」 ここまでは、近年紅白歌合戦で「80年-90年代」の曲が人気ソングとして注目される要因について分析した。 後編『今年の紅白歌合戦の「テーマ」にはメッセージが隠されていた…視聴率低下に悩むNHKの打開策』では、少子化などの背景も踏まえて、NHK紅白歌合戦が目指す姿を考察する。
徒然研究室(仮称)、現代ビジネス編集部