紅白歌合戦に「90年代」の曲が増えている”納得の理由”…紅白出場者の基準に変化が起きていた
毎年大晦日に行われる「NHK紅白歌合戦」。今年はその75回を迎える。司会には俳優の橋本環奈、伊藤沙莉(さいり)、お笑いタレントの有吉弘行、アナウンサーの鈴木菜穂子が抜擢され話題になった。 【写真】今年の紅白に出てほしかったミュージシャン」ランキング! その一方で、若者のテレビ離れも相まって近年の視聴率はかつてほどの高さではない。 去年は韓国アイドルTWICEやNew Jeans、1977年にキャンディーズとして出場してから46年ぶりとなった伊藤蘭の起用など、時代を飛び越えた演出にNHKの努力がうかがえる。 その背景には、NHKが紅白歌合戦に設定する「テーマ」と音楽業界の新しい潮流があるという。今回は、メディアプラットフォーム「note」で紅白歌合戦をはじめとする、音楽業界の動向をデータ分析を用いて考察している、“徒然研究室(仮称)”氏(以下、徒然研究室)に話を聞いた。 (以下、「」内は徒然研究室のコメント)
紅白を彩る「90年代」
これまで紅白歌合戦はその年のヒットチャートをもとに人気歌手の起用が多く見られていたが、近年はその通りではないと徒然研究室は指摘する。昨年、一昨年と紅白歌合戦のデータ分析を行ってきた氏は「80年-90年代」がキーワードだと語る。 「令和のJ-POPシーンを読み解くキーワードとして『80年-90年代』に注目しています。昨年の紅白関連のデータからも、この時代の影響が色濃く表れているのが見て取れました。特に紅白を彩る『90年代』の楽曲は、私のデータ分析の中でも特に興味深いポイントの一つでした。 昨年の紅白では、出場者の『地上波の視聴率における順位』と『紅白公式YouTubeの視聴回数の順位』を比較するデータ可視化を行いました。『地上波の視聴率における順位』は、放送されている間、視聴率が高かった時間に歌を披露していた出場者を見ました。その中で特徴があったのが『90年代』に関わるアーティストでした」 徒然研究室が指摘するのは、90年代に人気を博したアーティストたち。特別企画枠で出演したポケットビスケッツさんやブラックビスケッツは、2023年の主なヒットチャートにはチャートインしていないにも関わらず、紅白の生放送、公式Youtube配信でも非常に多くの“関心”を集めたことがデータ分析からわかったという。 地上波の放送で視聴率が高いのはまだしも、若者世代のユーザーが多いYoutubeでも反響があったのは意外と言える。 この現象を次のように分析する。 「(ポケットビスケッツとブラックビスケッツは)いずれも90年代に放送されていた『ウッチャンナンチャンのウリナリ!!』から生まれた音楽ユニットで、当時人気を博していましたとされています。彼らが2023年の紅白で関心を集めたこの現象は、『紅白出場者には、その年のヒットチャートにチャートインした歌手が求められている』という前提だけに立っていては説明のできないものです」 一昨年の紅白にも1995年にリリースされた「愛しさとせつなさと心強さと」を歌った篠原涼子が出場した。徒然研究室によると、2022年の紅白歌合戦とその公式Youtubeで篠原涼子が高い視聴回数を稼いだという。 「ポケットビスケッツとブラックビスケッツがたまたまヒットしたわけではなく、確実に『80年-90年代』というジャンルがヒットの背景にあうのではないでしょうか」