「私の東京のはじまりは和光」作家・青山美智子「人魚が逃げた」の舞台“銀座”の思い出を振り返る
◆ふとしたやり取りが物語のヒントになる
青山:新井さんとの銀座物語が私のなかであって。もしかしたら新井さんと私の思い出は違っているかもしれないんだけど、12月終わりぐらいに資生堂パーラーでお茶をしたことがあったんだよね。夕方から閉店ぐらいまでずっと喋っていた思い出ある。 新井:うんうん! 青山:日記を辿ったら4年前だった。「赤と青とエスキース」(PHP研究所)の構想を練るぐらいの時期だったね。新井さんって「不思議の国のアリス」が好きじゃん? 新井:うん、好き。 青山:帰り道に空を見ると三日月が出ていたんですよ。銀座のイルミネーションのなか、綺麗な三日月をふたりで見上げた思い出が私のなかで色濃くあって。 新井:それは全然覚えていない(笑)。 青山:そういうものだよね(笑)。そのとき、新井さんは月を見て「チェシャ猫の口みたいだな」って言ったの。 新井:なんか言いそう(笑)。 青山:「不思議の国のアリス」の猫だよって教えてくれてね。あれがすごく印象的だった。ちょっとネタバレになっちゃうけど、「人魚が逃げた」にもチラっとアリスが出てくるんだけど、あれを書いているときはそのときの思い出がずっとあったの。新井さんのことを考えながら書いていた。 新井:私の発言が本に!? 青山:そうそう! 「不思議の国のアリス」といえば私のなかで新井さんなんだよね。 (「元・本屋の新井、スナックのママになる。」2024年11月25日(月)配信より)