2019年の甲子園で思い出に残った逸材たち!超高校級の技術を披露した井上広大(履正社)と周りのサポートで大化けした195センチ右腕・赤塚健利(中京学院中京)【主筆・河嶋宗一コラム『グラカンvol.31』】
コーチの指導と同級生捕手の操縦で大化けした赤塚 健利(中京学院大中京)
もう1人は中京学院大中京の赤塚 健利投手(広島)。195センチ103キロの大型投手として注目されました。赤塚投手はまさに「ザ・素材型」の選手。甲子園では変化球を投げず、最速148キロを計測した威力抜群の直球で勝負して、リリーフとして活躍。甲子園ベスト4に導き、この大会でブレイクしました。 しかし入学当初は制球力も悪く、なかなか球速も速くなりませんでした。 悩む赤塚投手のフォームを改善させ、甲子園でブレイクできたのは1人のコーチがいました。それが当時、投手コーチをしていた森 昌彦氏です。豊川高では監督、コーチを務め、2014年のセンバツベスト4入りに貢献。2016年から同校のコーチに就任しました。森コーチは選手の個性を見抜いて、その投手に合った技術指導ができる名人のような方でした。長身ながらも横振りだった赤塚投手は森コーチからトルネード投法を薦められ、縦に投げる動きを身につけます。さらに自分でもフォームを研究し、「体幹を使う意識で、軸足を蹴り上げる」動きを習得し、ストレートの球速が148キロまでスピードアップしました。 バッテリーを組む藤田 健斗捕手(阪神)の操縦も大きかったと思います。赤塚投手に対してはど真ん中に構えていました。そしてコーナーへ要求することもなかったといいます。 「赤塚は真ん中に構えておけば、勝手に散らばってくれて、良い感じにコーナーに決まるんです。僕が外角、内角などコーナーに寄って、コーナーで投げる意識が強くなると、腕が振れなくなってしまう。それは1年生からずっと受けてきて分かっていたので、赤塚の場合は真ん中だけ構えておけばいいんです」(藤田) また藤田選手は赤塚投手のスケールの大きさを見て何としても化けてほしい思いがありました。 「最初は伸び悩んでいたので、なんとかしたくて。絶対にあの体格で150キロを投げられないわけがないじゃないですか。でも130キロ後半で、物足りないと思っていました。バッテリーを組む過程で、赤塚を育てようと思って。高校野球をやってきて、最後にああいう形で148キロも出て、僕はめっちゃ嬉しかったです」 プロ入りする選手には、教えられたことをすぐに吸収して、パフォーマンスができるセンスの高い選手がいます。しかし不器用だけど、技術が身についたら物凄いパフォーマンスを発揮する選手もいます。その爆発力はセンスの良い選手よりもすごい。赤塚選手はまさに後者で、その能力を引き出すために、いろんな方のサポートがあった背景を知って、2019年の甲子園の取材はとても有意義でした。 赤塚投手はその後、中京学院大を経て昨年のドラフトで広島から5位指名を受けました。 もうすぐ始まる甲子園では甲子園のヒーローたちの技術論、思考法や、甲子園でブレイクするまでに至るまでの背景を掘り下げて、皆様にお伝えできればと思います。 *『主筆・河嶋宗一コラム グラカン!』は毎週日曜配信します。