どことなくリアルでシュール… 27体の像が人気集める桃太郎神社
年が明け、「今年はどこに行こうかな?」なんて旅の計画を立てる人も多いのでは。東海地方にはまだまだ知られていない魅力ある場所が眠っている。行ってみたくなる、そして誰かに教えたくなる。そんな魅力あふれる珍スポットを記者たちが訪ねた。 【写真】「やさしい鬼です。背中へどうぞ」と書かれたプレートをぶら下げる鬼の像 桃太郎ってどこの話? 発祥地の一つとされるのが愛知県犬山市の栗栖地区だ。岡山県、高松市と並び「日本三大桃太郎伝説地」に数えられる。その地区内にいっぷう変わった神社があり、観光スポットとなっている。人々を引きつけてやまないのが、ユーモラスな像の数々だ。【塚本紘平】 その名も「桃太郎神社」。まず鳥居の前で出迎えてくれるのが、パカーンと割れたモモの真ん中で裸で万歳して立つ桃太郎の像。誕生のシーンなのだろう。どことなくリアルな姿に、ほっこりする。他にも犬、サル、キジなどを含め像は計27体ある。 ここを訪れたとみられる人たちのSNSの投稿には、世俗的な感覚からかけ離れ、独創的というニュアンスで使われる「シュール」という感想が目立つ。 <シュールすぎる> <シュールな作品に圧倒される> <シュールで笑い転げた> 実は、宮司3代目を務める若森国道さん(79)も、2代目から神社を引き継いだ時に驚いたという。「境内の真ん中に像があることにびっくりしました。初代の宮司が、本当に桃太郎伝説を大切にしていたんだなとひしひしと感じました」 初代宮司の故・川治宗一さんは桃太郎伝説のシンボルを作るため、私財を投じて1930年に神社を創建。像の多くは、コンクリート造形作家の故・浅野祥雲さん(岐阜県中津川市出身)が手掛けた。 愛知県日進市の宗教公園「五色園」には浄土真宗を開いた親鸞にまつわる人形約100体があり、こちらも浅野作品が並ぶ「珍スポット」として知られる。また、天下分け目の関ケ原の合戦を約200体の人形で再現した公園「関ケ原ウォーランド」(岐阜県関ケ原町)にも浅野作品が現存する。 若森さんは「像を見て桃太郎を感じてもらえたら。桃太郎伝説を大切にし、この神社を通して後世に(伝説を)受け継いでいきたい」と話す。ただ、その伝説は他の地域とは少し異なるという……。 桃太郎神社のそばを流れる木曽川でおばあさんが洗濯しているとモモが流れて来て、そのモモから生まれた桃太郎はすくすくと成長した。 ある日、近所のおじいさんとおばあさんから「娘が連れ去られ、宝物も奪われた」と泣きつかれた桃太郎は鬼退治を決意。犬、サル、キジを引き連れ、鬼ケ島にたどり着く。そこは現在、神社が建つ場所から北東へ8キロ、山を越えた岐阜県可児市の川の中。そして見事、鬼退治に成功した。 しかし、ここから物語は広く知られる内容とちょっと違う。鬼は「ごめんなさい」と謝り、桃太郎は許す。そして鬼は桃太郎の住む所に遊びに来ては、住民との交流を楽しんだというのだ。 それゆえ、神社の境内には「もう悪いことはしません」と反省の弁が記された鬼の像も。地面に両手をついてかがみ、首から「やさしい鬼です。背中へどうぞ」と書かれたプレートをぶら下げる鬼の像もあり、「映え」スポットとなっている。 栗栖地区には節分で「鬼は外、福はうち」と言った後に「鬼もうち、福もうち」と続ける風習が残る。シュールな像を前に、鬼ですら許してしまう。そんな、優しい気持ちになれるスポットだ。 ◇桃太郎神社 名鉄犬山遊園駅から徒歩約40分、タクシー約5分。車は名神高速道路小牧インターチェンジから約30分、駐車場有り。拝観無料。宝物館は午前10時~午後4時、大人200円・小中学生100円。問い合わせは桃太郎神社(0568・61・1586)。