イランのレーダー数基が被害受け死亡4人に…報復の権利を主張、一方で停戦交渉は重視
【テヘラン=吉形祐司、エルサレム=田尾茂樹】イラン軍は26日、イスラエル軍が隣国イラクから発射したミサイルでレーダー数基が被害を受け、兵士の死者数が計4人になったと発表した。報復の権利を主張する一方、再開が予定されるパレスチナ自治区ガザの停戦交渉などを重視するとしており、即時反撃を見合わせる可能性を示唆した。
発表によると、イラク領内から多数のミサイルが発射され、西部フゼスタン州、イラム州と、首都テヘランがあるテヘラン州周辺のレーダーが被害を受けた。修理中という。防空任務中に負傷した兵士2人が死亡したことも発表した。先に発表された2人の死亡も飛翔(ひしょう)体によると説明していた。
ロイター通信は専門家による衛星画像の分析で、テヘラン郊外のミサイル製造施設2か所が攻撃されたと報じた。ミサイルの推進剤となる固体燃料と酸化剤を混合する施設だという。
米国は攻撃への関与を否定しているが、イラン国連代表部は26日、SNSで、イラク領空は「米軍が占領し、管理している」とし、米国が共謀していたと主張した。サウジアラビア当局者は26日、自国領空は使われていないとロイター通信に強調。ヨルダン国営通信も自国領空を通過した「紛争当事者の軍用機はない」との軍事筋の話を伝えた。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナルなどによると、イランはイスラエルによる攻撃前、周辺アラブ諸国に対し、イスラエルに領空の使用を認めれば、イランの攻撃対象になると警告したという。領空通過が容易なイラクが攻撃のルートとなった可能性がある。
攻撃では米国が反対する石油関連施設を標的とすることは回避されたと報じられているが、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は26日の声明で「米国の指示ではない」と強調した。
イランの反応が注目される中、最高指導者アリ・ハメネイ師は27日、テヘラン市内の会合で今回の攻撃に触れ、「シオニスト政権(イスラエル)の誤算を正さねばならない。イランの力を理解すべきだ」と述べ、対応する考えを示唆した。ただ、報復や反撃など明示的な言葉は使わず、「政府当局者が国家に最善の方法を決めるべきだ」と指摘するにとどめた。
イラン軍は発表で、「適切な時期に反応する権利を留保する」としたが、ガザやレバノンでの停戦の重要性を強調した。現時点では交渉の行方を見極める方針とみられる。