【ゆるく繋がる地域の《居場所》】自宅の空き部屋を開放し「おしゃべり会」を開催。ご近所さんと互いに安心して生活できる関係を<東京都世田谷区「砧むらおばちゃん会議」>
不安や心配ごとを共有できる仲間が近くにいたら、どれだけ心強いか――。ご近所同士で助け合える場を自ら作り、そこに集う人たちはどんな関係を築いているのだろう 【写真】学べて笑えるデイサービス * * * * * * * ◆<東京都世田谷区「砧むらおばちゃん会議」> 安心感を近所で共有 次に訪れたのは、東京都世田谷区砧(きぬた)の閑静な住宅街にある一軒家。ご近所の人が集い、交流する団体「砧むらおばちゃん会議」の代表・大海(おおがい)篤子さん(83歳)のご自宅だ。 1階の空き部屋を「くつろぎ処おおがいさんち」として開放し、月2回、なんでも語り合える場「おしゃべり会」を開催している。 「3人の子どもが巣立ち、空いた部屋をどうしようか考え始めた頃、今は亡き夫が認知症を患いました。それまでは旅行だ、映画鑑賞だとアクティブだった私は外出がままならなくなり、気が滅入ってしまって……。 そこで近所の人に、『うちで遊ぼう』と声をかけたのです。それからはしょっちゅう集まって、夫も交えて、お茶をしながら雑談をするようになりました」(大海さん) これを機に近所の人たちは大海さんの夫を気にかけ、家の外で見かけると連絡をくれるようになったという。大海さんは、「夫を見守っているのは私ひとりじゃないと、とても心強かった。こうした安心感を、近所全体で共有できたらなって思ったんです」と、当時を振り返った。
実際、砧の住宅街も高齢化が進み、独居老人が増えている。住民たちは挨拶する程度の近所付き合いだったが、世代を超えてもう少し密な交流が生まれれば、互いに安心して生活できるはずだ。 そう考えた大海さんは、親しくしていた6人のご近所さんの協力を得て、「砧むらおばちゃん会議」の立ち上げを決意。自宅の空き部屋を開放し、気軽におしゃべりしながら、助けられたり助けたりの関係づくりを2016年にスタートした。 活動趣旨や予定などを綴った『砧むらだより』を約500部作成し、町内会の回覧板に挟む、郵便受けに投函するなど行ったところ、初回に10人ほどが参加した。以来、毎月『砧むらだより』を発行。今や93号目だ。徐々に参加人数は増え、現在は1ヵ月あたり70~90代の約50人が参加者として集う。 実際に「おしゃべり会+小さい歌う会」に参加すると、雨天にもかかわらず、下は75歳から上は91歳まで15人の女性が集まっていた。「家族が外出にいい顔をしない」「どんな場所なのか疑心暗鬼だった」などの理由で躊躇していたが、思い切って初参加したという方も。参加費は、お茶代の100円ぽっきりだ。 「ペットボトルのお茶を紙コップで分け合えば安いもの。実質、この100円と、『砧むらだより』の紙代や印刷代として世田谷区の『地域の絆連携活性化事業』から出る補助金が運営費です。コロナ下ではマスクを数百枚手作りして学校や医療施設に配ったり、参加者のお誕生日会を開いて、ケーキ代に充てたり。有効利用しているでしょ?」と、大海さんは自慢げに笑う。
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