山本由伸はオリックス時代の調子に戻ってきた メジャーデビュー10試合で見えてきたもの
【山本は今後、誰とバッテリーを組むべきか】 ここまでの山本は、正捕手のウィル・スミスよりも、控え捕手のオースティン・バーンズとバッテリーを組んだ時のほうが好成績を収めている。スミスとの7登板は、37.0イニングで被打率.238と防御率4.62。5失点した初登板を除いても防御率は3.50だ。一方、バーンズとの3登板は、17.0イニングで被打率.191と防御率0.00。自責点だけでなく、失点もない。 サンプル数はまだ少ないものの、スタットキャストによると、ほかの投手と組んだ試合も含め、フレーミングやブロッキングはスミスよりもバーンズが優れている。山本はバーンズとバッテリーを組んだほうが好成績を残せるかもしれない。 けれども、そうすべきだとは思わない。 スミスは44試合で打率.301と出塁率.372、5本塁打、OPS.844を記録している。一方でバーンズは15試合で打率.189と出塁率.318、0本塁打、OPS.534だ。この違いは今シーズンだけではない。しかも今シーズンのスミスの出塁率は、ムーキー・ベッツ、大谷、フレディ・フリーマンの3人に次いで高く、OPSは大谷とベッツに次ぐ。大谷の欠場時にスミスはDHも務めている。 ドジャースは現在ナ・リーグ西地区の首位に立ち、ほかの4チームを引き離している。まさかの事態が起きないかぎり、過去11シーズンと同じくポストシーズンに進出するはずだ。 よってここからのレギュラーシーズンは、山本とスミスが息の合ったバッテリーとなるための期間にあてることができる。試行錯誤があっても構わない。それがうまくいけば、1勝の重みが増すポストシーズンの試合において、山本が登板する時に打てるスミスをラインナップから外し、打てないバーンズを起用する必要はなくなる。 また、今秋のポストシーズンのみならず、その先のこともある。バーンズは34歳。今シーズンは2年700万ドルの契約2年目で、来シーズンは年俸350万ドルの球団オプションだ。スミスは29歳。今シーズンの開幕直後に10年1億4000万ドルの延長契約を交わした。
バーンズは早ければ今オフにドジャースからいなくなるが、スミスは違う。近い将来、山本がバーンズに代わる控え捕手と新たにバッテリーを組むよりも、今シーズン中に山本とスミスが良好な関係を築くほうが、長期的にも望ましい。 山本とスミスが球界屈指のバッテリーとなれば、ドジャースは今秋のワールドシリーズ優勝にとどまらず、そこからの黄金時代に向け、大きな一歩を踏み出すことができる。
宇根夏樹●取材・文 text by Une Natsuki