開幕直前のJリーグで起きた5人のFWシャッフル。成功するのは誰?
今年6月には33歳になる都倉にとっては、セレッソが5つ目の所属チームとなる。昨シーズンは自己最多の12ゴールをマーク。187cm、80kgの恵まれたボディに宿る稀有な潜在能力は、サンフレッチェ広島およびレッズの監督をへて、昨シーズンからコンサドーレの指揮を執るミハイロ・ペトロヴィッチ監督の指導によって大きく解き放たれた。 しかし、2014シーズンから所属するコンサドーレでJ1昇格と残留、クラブ最高位となる4位躍進を経験してきた過程で、都倉が残り少ない現役生活へ思いを馳せる機会も増えた。そうしたタイミングで届いたセレッソからのオファーに抱いた率直な思いを、コンサドーレの公式ホームページを介してファンやサポーターへこう伝えている。 「今回の移籍に関しては、決断でした。(中略)未来を約束することが年々難しくなるなかで、僕を信じ挑戦させてくれる評価でした。自分の人生について考えに考えて、挑戦したいと思いました」 セレッソの新監督に東京ヴェルディを2年連続でJ1昇格および参入プレーオフに導いた、ミゲル・アンヘル・ロティーナ監督が就任したのも大きい。緻密なポジショニングを要求するスペインの名将のもと、ポストプレーにも長けた都倉が30歳を超えて右肩上がりに転じさせた成長曲線が、さらに継続されていく可能性は十分にある。 そして、ペトロヴィッチ監督と都倉の間で生じた化学反応の再現が、鈴木との間でも期待される。ジャマイカ人の父と日本人の母の間に生まれ、2012シーズンにアルビレックス新潟へ加入した鈴木は、驚異的と形容される高い身体能力を長くもて余してきた。 アルビレックス時代にJ1であげたゴールはわずか7。その間に水戸ホーリーホック、松本山雅FCへ期限付き移籍し、J2の舞台で武者修行を積むも才能が開花するには至らない。しかし、J1へ初めて臨むV・ファーレンへ完全移籍した昨シーズンは、11ゴールを量産してブレークを果たした。 背景には現役時代に「アジアの大砲」と呼ばれたストライカーの大先輩、高木琢也前監督(現大宮アルディージャ監督)の指導があった。相手との駆け引きやシュートを外した後でも強気を貫くメンタルなど、それまでの鈴木に欠けていた要素が注入されたことが覚醒を導いた。 もっとも、桐生第一高校(群馬)時代から期待されてきた能力のすべてが反映されていたわけではない。50mを5秒9で走破するスピードと185cm、74kgのボディに搭載された高さと強さが、ペトロヴィッチ監督の指導を介してさらに融合されれば、J1通算33ゴールをあげているベテランのジェイ(36)とのポジション争いに勝つ、あるいは1トップとシャドーで共存する形も十分に期待できる。 伊藤は新天地アントラーズで、森保ジャパンに招集されながら故障で無念の辞退を強いられた鈴木優磨(22)、昨夏に加入して救世主的な活躍を演じたセルジーニョ(23)が築く牙城に挑む。 J1通算で70ゴールをあげている李だが、昨シーズンはわずか3ゴールにとどまり、レッズから契約を更新しない旨を告げられた。新加入した杉本に押し出された部分もあるが、出場20試合中で唯一の先発を果たしたFC東京との最終節では2ゴールをゲット。勝負強さと得点感覚の高さを証明しただけに、2人のブラジル人FWが加わったマリノスでまずは先発の座を目指す。 杉本を引き金に起こったストライカーたちの移籍シャッフル。それぞれの立ち位置などを考えれば、24歳と年齢が最も若く、まだまだ粗削りであるがゆえに伸びしろもあり、活躍次第では森保ジャパン入りも現実味を帯びてくる鈴木を獲得したコンサドーレが、開幕前の時点においては最も戦力アップに成功したクラブと言えそうだ。 (文責・藤江直人/スポーツライター)