貯金より経験に投資して「記憶の配当」を得るべし お金を使った方が「豊か」になれるこれだけの理由(レビュー)
2020年に刊行されて以来、ヒットし続けている異色のマネー本がある。『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』(ビル・パーキンス著、児島修訳、ダイヤモンド社)だ。 直訳すると「ゼロで死ね」というタイトルの本書は、お金の“貯め方”ではなく“使い切り方”に焦点を当てた本になっている。 『はじめての新NISA&iDeCo』など90冊もの著作をもつマネーコンサルタントの頼藤太希氏(株式会社Money&You代表取締役)も、本書に大きな影響を受けた一人だ。 お金のプロである頼藤氏も、限度はあるものの「お金は使ってこそ価値がある」と共感する。本書に書かれた「記憶の配当」という考え方から、なぜお金を使った方が人生は豊かになるのか、頼藤氏に解説してもらった。 ***
「記憶の配当」を意識する
同書では、「思い出や経験は、死ぬまで我々に配当を与えてくれるものだ」とも書いています。 たとえば、お金をかけて20代のうちに世界一周旅行をしたとします。その旅行から得た経験ポイントは、以後いつまでも記憶の中に残り続けるでしょう。そして、その記憶を思い出して楽しい気持ちになることができます。さらに、家族に思い出話をして楽しんだり、他の人に話して共有したり、ときにはその経験を生かしてアドバイスをしたりすることもあるかもしれません。 こうした、経験から引き出されるポジティブな連鎖反応のことを、同書では「記憶の配当」と呼んでいます。 もし、70代になってから世界一周旅行をしたら、それはそれでいい経験・思い出になるとは思います。しかし、記憶の配当を得る時間は20代のときよりもずっと少なくなってしまいます。仮に90歳まで生きるとして、20代の経験からは約70年間にわたって記憶の配当が得られるのに対し、70代の経験からは20年間しか記憶の配当が得られないからです。 さらに、記憶の配当は、再投資することによって複利効果が得られます。複利効果は、何も投資だけに使えるものではありません。経験にも活用できます。今しかできない若いうちの経験に、お金と時間を集中させたほうがのちのちの自分のために良いというわけです。