【北鎌倉トレッキングルポ:後編】歴史の足跡をたどりながら「これぞ鎌倉!」な絶景をいく
鎌倉には気軽に楽しめるハイキングコースがいくつかあります。その中でも人気が高いのが天園ハイキングコース。近くに別荘を構えていた東郷平八郎が、「まるで天国の園に遊ぶようだ」と表現したのが由来だとか。前編では穴場の切通しを巡りましたが、今回は鎌倉で2番目に高い六国見山(ろっこくけんざん)を経由して、天園ハイキングコースに向かいます。 【写真】みなとみらいから富士山まで眺望できる北鎌倉ハイクを見る(全10枚)
6つの国が見渡せるナイスビューが魅力の六国見山へ
高野の切通し、大船の切通しを堪能したあとに向かったのは、標高147mの六国見山。かつて山頂より6つの国(相模、武蔵、伊豆、上総、下総、安房)を望むことができたことから、この名がつけられたそうです。 現在は、山の中腹に広がる樹林地を保全するため、森林公園として整備されています。ゆえに山頂へ通じる道も歩きやすい! 途中でふと右側に目をやると、木の葉の間から大船観音が見えました。 軽快な足取りのまま、山頂付近の展望台に到着。晴天でしたが、少しガスっていたためかクリアな眺望とはいかず。ちなみに、湿度の低いからっとした晴れの日だと富士山が堂々たる姿を見せてくれます。 振り返ると、横浜ランドマークタワーを始め、みなとみらいの街並みが一望できます。 展望台を後にして進むこと約300m。木の根元にコンクリートブロックと小さな立て札があり、そこに「六国見山山頂」と書かれていました。 こんなに控えめな山頂標識に出会ったのは初めてです。もう少し主張してもいいのに……なんて思いながら、天園ハイキングコースを目指します。
海へと続く若宮大路が見下ろせる天園ハイキングコース
静かな住宅街を散歩気分で歩いていると、ドーナツ型の凹みが続く急坂が出てきます。そこを右折した先が、天園ハイキングコースの入口です。余談ですが、グーグルマップだと明月院方面入口となっていますが、すぐ脇にある桐慕茶屋にちなんで、桐慕茶屋口とも呼ばれています。 歩いて20分ほどで、天園ハイキングコース最初の立ち寄りスポット、勝上献展望台に到着します。ここで、一度目のナイスビューを堪能。建長寺の裏山につき、眼下には建長寺の境内が、遠くには相模湾が望めます。富士山のナイスビューはおあずけとなりましたが、それでも満足の眺望でした。 天園ハイキングコースは建長寺を拝観してから合流することも可能で、往来が多いからか、登山道がしっかり踏み固められています。ただ、たくさんの人が歩いたことで磨かれている場所もところどころに出現するので、滑らないように注意しながら歩を進めます。 風化した磨崖仏が鎮座している十王岩のところからは、これぞ鎌倉! という大パノラマを堪能できます。市街地を突っ切る一本の筋は、鶴岡八幡宮と由比ガ浜を結ぶ若宮大路です。 一方は海に面し、三方向から山が囲む天然の要塞都市だったということが、こんなによくわかる場所もないでしょう。ここに立つと、鎌倉のあちこちに切通しがつくられたのも納得です。 しばらく道なりに歩くと、覚園寺分岐と呼ばれる分岐点に差し掛かります。このまま進めば天園へと続く道、ですが、今回はここを右折して覚園寺に抜けることにします。 百八やぐらを過ぎ、竹林を抜け、ふたたび鬱蒼とした場所を下っていくと民家を発見。そのまま下りていった道路の角には庚申塔がありました。ここが今回のゴールです。 鎌倉市内のさまざまな場所からアクセスできる天園ハイキングコースは、ほかのスポットと組み合わせれば何通りもの楽しみ方ができます。ショートコースでも四季折々の自然をたっぷり満喫できるので、秋から冬にかけて、ぜひ出かけてみませんか。
林 加奈子