家電量販店の優等生・ノジマが営業利益率で勝るヤマダ、ビックカメラに劣る数字…VAIO買収の先に潜む死角とは
ノジマのVAIO買収にどれだけのシナジー効果があるのか?
過度な事業の多角化を進めた先で、市場評価が下がる現象を「コングロマリットディスカウント」と呼ぶ。 かつての東芝や日立製作所が典型的な例で、2社ともに事業を整理してコングロマリットの解消を進めた。 通常、M&Aなどで事業の多角化を進める場合、シナジー効果が生じて価値は高まりやすい。 例えば、ビックカメラは2012年にコジマを連結子会社化したが、これは都市型のビックカメラと郊外型のコジマで出店エリアの相互補完ができるというシナジー効果に期待してのものだった。 ヤマダは2011年に住宅メーカーのエス・バイ・エルを連結子会社化した。 家電量販店が住宅事業に参入することで世間を驚かせたが、ヤマダは顧客に対して太陽光発電やオール電化の提案をしやすくなった。住宅展示場と家電量販店を同じ敷地内に入れられるなど、シナジー効果は高い。 ヤマダもコングロマリット化を進めているが、顧客の暮らしを支えるというテーマが通底している。 一方、ノジマは「デジタル一番星」という方針は掲げているものの、一時はスルガ銀行との資本提携を進めるなど、一貫性に欠けている印象を受ける。 携帯電話販売事業や衛星放送チャンネルなど、やや斜陽化している産業を強化している点も気がかりだ。 そこにパソコンの製造や販売を行うVAIOの買収である。VAIOは2024年5月期の純利益率が2.3%と決して高い水準ではない。純資産50億円ほどの会社に111億円(概算額)の価値をつけた。 家電量販店の市場規模は長らく高止まりが続いており、決して将来性のある産業とはいえない。 その中で、ノジマはコングロマリット化を進める戦略をとった。それを株価に反映することができるのか、経営手腕が問われる局面だ。 取材・文/不破聡 サムネイル/Shutterstock
不破聡