海上輸送群創設へ 南西地域の機動展開力向上 自衛隊
今年度の防衛白書によると、防衛省は南西地域への人員輸送や物資搬入に必要な能力を向上させるため、共同部隊・自衛隊海上輸送群(仮称)を今年度中に新編する。台湾有事などを想定し、陸上自衛隊の隊員や必要な車両、武器弾薬を先島地域に海上輸送で展開するため、専門の部隊を創設する予定。 軍事費を増額させ、兵器の近代化を急速に図ってきた中国は台湾への武力侵攻も想定しているとされる。台湾有事に備え、防衛省・自衛隊は米国・在日米軍と協力し、その抑止・対処を図る。今月上旬まで石垣島、与那国島を含む複数の九州・沖縄地方の自衛隊施設で日米合同演習「レゾリュート・ドラゴン24」を行った。 自衛隊員と装備を島しょ部に移動・搬入させる能力の強化が大きな課題で、特に両島に駐屯地を置く陸上自衛隊は、その手段・方法を増やすことが急務だった。 自衛隊海上輸送群(仮称)は、陸自・海自が共同で同部隊を運用することで、先島地域への輸送力の向上を図る部隊。 具体的には、LCU(数百トン級・小型船舶)とLSV(1000㌧級超・中型船舶)を新造し、部隊に配備する。昨年10月までに、船舶の一部は既に国内造船メーカーと契約を結んだ。 防衛省は先述の2種類とは別に「機動舟艇」と呼ばれるタイプも取得し、同部隊に配備する予定。同船舶は船首の一部が前倒しに倒れ、架橋のようになり、車両を降ろせる仕組みになっている。今年度の防衛白書には、イメージ図として、浜辺に乗り上げた状態で陸自の車両が降りる様子が示されている。 昨年度の自衛隊演習「総合火力演習」を紹介するユーチューブ動画では、「LCU」、「LSV」、「機動舟艇」に加え、海自輸送艦「おおすみ級」と思われる艦船の揚陸支援システムが海上輸送部隊に配備され、宮古や石垣、与那国の3島に部隊を輸送する様子がイメージ図として収録されている。 自衛隊海上輸送群(仮称)では、2027年度までに3種類の船舶を計10隻取得する予定で、今後、石垣港や久部良港、祖納港などの港湾を使用した訓練なども行われると見られる。