船井電機が目指す破産手続き取り消し、成功率は「天文学的な低さ」 東京商工リサーチ指摘
船井電機の破産手続きに反対する原田義昭会長が2日、東京地裁へ民事再生法の適用を申請した。10月に同地裁が決めた破産手続きの取り消しを目指す狙いがあるが、一度決めた決定を取り消すのは極めて難しい。東京商工リサーチのリポートによると、平成31年1月から令和6年10月までに破産手続きが行われた3万2998件のうち、開始決定が取り消されたのは5件、「破産取消率」は0・015%。リポートは、取り消しの成功率は「天文学的な低さだ」と強調。カギを握るのは、確実性の高い再生計画とも指摘する。 ■船井は民事再生を模索 破産は会社の清算を目的とする法的手続きで、裁判所が選任した破産管財人が会社に残された資産の金銭的価値を算定し、債権者に配当する。これに対し、民事再生と会社更生は会社を存続させつつ、債務を減額して、経営を再建する方法だ。民事再生や会社更生が認められれば、破産よりも手続きが優先される。 民事再生の場合は原則として経営陣がそのまま残ることもできる。会社更生は株式会社に限られた手続きで、多数の関係者の利害調整が必要な場合に用いられる。民事再生に比べて手続きが複雑で経営者の退陣が前提となるなどの違いがあり、船井は民事再生の道を模索している。 破産が覆った例として、大人用おむつメーカーの近沢製紙所(高知県いの町)のケースがある。同社は5年9月、高知地裁から破産開始決定を受けた。原材料高や大口顧客との取引解消などで約27億円の負債を抱えていたという。その後の財産処分の過程で、複数のスポンサー候補が現れ、資産の個別売却を上回る金額で、事業を他社に承継するめどがついた。これを受け、今年4月に民事再生法の適用が決まった。 また、暗号資産取引のマウントゴックス(東京都渋谷区)は、不正アクセスでビットコインが流出し、約65億円の負債を抱えて平成26年に破産開始決定を受けた。その後、暗号資産が高騰し、資産価値が膨れ上がったことで、30年に異例の民事再生が認められた。 ■難しい「再建の確実性」証明
ただ、船井電機の場合、従業員がすでに解雇されており、事業の価値は損なわれているとされる懸念がある。暗号資産のような著しい値上がりが期待できる保有資産もない。信頼できるスポンサーをみつけ、再建の確実性を証明する必要がある。東京商工リサーチの担当者は「債権者も納得しないといけない。(船井側も債権者も)みんながウィンウィンにならないと難しい」と分析している。(高木克聡)