脳神経外科のスゴ腕ドクターは“元ヤン少女”!「髪は剃らない」手術スタイルで患者の心に寄り添う
ヤンキー時代について、「(高校)入学して1週間くらいですぐに停学になって、1か月くらいで退学に。悪の限りを尽くしました」と苦笑いを浮かべながら語る榎本さん。外見は茶髪にパーマ、夜な夜なバイクで走る日々だったという。そんなある日、友人をバイク事故で命を失った。病院で医師から見せられたのは、亡くなった友人の頭蓋骨がバキバキに折れている写真。
「(医師から)「お前らな、こういうことをやっているとな!」とすごく怒られて、それを強烈に覚えています。後から思うと大きい影響があったかなと思う」と、当時を振り返る。友人の死と医師からの喝を機に、命と向き合った榎本さん。その姿勢が、“人の命を救える医師になりたい”という思いにつながっていった。
医師を目指し、通信制の高校に入学。猛勉強の末、21歳の時に岐阜大学医学部に合格した。“死ぬ気で勉強しまくっていた”という高校時代。1日3時間寝る以外の時間は、すべて勉強に費やしていたという。 あれから30年、“ヤンキー少女”は、患者からも仲間からも信頼される医師へと成長を遂げた。
患者の日常に寄り添う、“髪は剃らない”手術
今年10月、榎本さんが手術を担当する患者、仙石建斗さんが訪れた。今年5月に脳出血で倒れ、一時は意識不明となった仙石さん。幸い一命をとりとめたが、脳出血の原因は「もやもや病」と診断された。もやもや病とは、脳の血流不足を補おうと、細い血管が煙のように“もやもや”現れることから、その名がついた難病。榎本さん曰く「もう一回出血を起こすと、障害が残ったり、命を失うこともある」という。
実は榎本さん、もやもや病の治療も経験豊富。仙石さんは、その評判を聞きつけ、なんと長崎からやってきたのだ。仙石さんには、印象に残っている榎本さんの“ある言葉”があった。それは、「髪の毛を剃らない。傷が見えちゃうから伸ばした方がいいよ」という手術前のアドバイス。脳の手術では、髪の毛は視野の妨げになるため、剃ることがスタンダードだ。