NTTドコモ「元リクルートの新社長」前田氏体制で問われる課題。通信品質と収益低下の打開策は
NTTドコモは5月10日、2023年通期決算を発表。同日の会見では、現社長の井伊基之氏が6月14日付けで退任し、前田義晃氏に社長の座を譲ることを明らかにした。 【全画像をみる】NTTドコモ「元リクルートの新社長」前田氏体制で問われる課題。通信品質と収益低下の打開策は 井伊氏は2020年6月にNTTドコモ社長に就任し、NTTによるドコモの完全子会社化の陣頭指揮を取ってきた。ahamoの発表など携帯電話業界に大きな影響を与えた人物だ。 NTTドコモは今後どのように通信事業を展開していくのか。井伊氏と前田氏それぞれのコメントと、今回公表された決算情報から読み解いてみよう。
通信キャリア脱却を目指した4年間。新社長の前田氏は元リクルート
井伊氏は在任中、通信キャリアからの脱却を目指し、コンシューマ向けには非通信領域の拡大に注力。dポイント経済圏を強みとして、通信サービスと周辺サービスの相乗効果で収益を上げる体制を整えた。 一方で、不採算事業の整理を積極的に行い、30以上のサービスを終了している。 法人向けにはNTTコミュニケーションズとNTTコムウェアをドコモ傘下に改組し、固定通信とモバイル通信の両方を扱える営業体制を構築。 さらに、XRのNTTコノキューとWeb3のNTT Digitalを設立するなど、新領域への進出も果たした。 前田氏はリクルートから転職し、2000年にNTTドコモに入社。情報配信サービスの「iチャネル」や、アシスタントサービスの「iコンシェル」などを手がけている。 直近ではスマートライフカンパニー担当の副社長として、コンテンツや金融・決済などの非通信領域の責任者を務めてきた。 井伊社長は「経営は現状を変革することだと思っている。変革すると必ず批判を受けたり反対される。(前田新社長は)そういったところに臆するところなく挑戦できると見込んだ」と前田氏への期待を述べた。
改革の余波に通信品質の課題
井伊社長の改革は、通信業界に大きな影響を与えた。 最も象徴的なのは、オンライン専用プラン「ahamo」の導入だ。 ahamoにより携帯料金の低価格競争に火をつけ、ドコモショップの業務オンライン化を進めて実店舗の削減方針を打ち出した。 しかし、この改革の余波はネットワークの通信品質にも現れている。2023年にはSNS上で不満の声が噴出し、300億円をかけたネットワーク対策をする事態となった。 5月10日の会見に登壇した前田氏は短い所信表明の中で、「ドコモをお使いになるご要望やご不満を常に真摯に受け止め、通信品質の向上、サービスの改善など、一つ一つの声に向き合い、改善していく」と言及。課題解決に向けた姿勢を示した。
石井 徹