相続財産清算人(相続財産管理人)とは 役割から選任方法、手続きまで解説
亡くなった人に相続人がいなかったり、相続人全員が相続放棄をして相続人がいなくなったりした場合、相続財産や借金、あるいは空き家はどうなるのかといった不安が生じるでしょう。こうしたケースに対応してくれるのが相続財産清算人です。相続財産清算人の役割と権限、選任手続きや誰が選任されるかなどについて、弁護士がわかりやすく解説します。
1. 相続財産清算人(相続財産管理人)とは
相続財産清算人(相続財産管理人)とは、被相続人(以下、亡くなった人)に相続人がいない場合や相続人全員が相続放棄をして相続人がいなくなった場合に、相続財産を管理したり清算したりして、最終的に残った財産を国庫に帰属させる職務を行う人のことです。 民法上、ある人が亡くなったものの、その人に相続人がいることが明らかでないときは、亡くなった人の財産は法人とみなされます(民法951条)。そのため、相続財産清算人は、その法人の代表者として、残った財産を国庫に帰属させるまでの職務を行うことになります。 1-1. 相続財産清算人の役割と権限 相続財産清算人の主な役割は、相続財産を管理するとともに、これを清算して、相続債権者や受遺者に対して弁済したり、国庫に帰属させたりすることです。 相続財産清算人の権限は民法103条が定める範囲内(保存行為など)の行為に限られ、これらを超える権限外行為をするには家庭裁判所の許可が必要です(民法953条、28条)。保存行為や権限外行為の具体例は以下のとおりです。 保存行為の具体例 ・預貯金口座の解約や払戻し ・不動産登記申請 ・建物などの修繕 権限外行為の具体例 ・不動産の処分(建物の取り壊しを含む) ・動産の売却、譲渡、贈与、廃棄(自動車の売却や廃車手続きを含む) ・ゴルフ会員権、株券などの売却 ・永代供養料の支払い、墓地などの購入費用 1-2. 相続財産清算人の選任手続き 利害関係人や検察官が亡くなった人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に選任申立てをし、家庭裁判所が相続財産清算人を選任します。利害関係人とは、相続財産について法律上の利害関係を有する者を言います。利害関係人の代表例は以下のとおりです。 ・事務管理者 ・成年後見人であった者 ・相続債権者、担保権者 ・葬儀費用を立て替えた者 ・相続債務者 ・特別縁故者であると主張する者 上記の利害関係人に該当しなくても、国の行政機関の長または地方公共団体の長は、所有者不明土地について、その適切な管理のため特に必要があると認めるときは、家庭裁判所に対し、相続財産清算人の選任申立てが可能です(所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法42条)。また、空き家などについて、その適切な管理のため特に必要があると認めるときも同様です(空家等対策の推進に関する特別措置法14条)。 そのため、亡くなった人の土地にごみの不法投棄がされていたり、建物が倒壊しそうになっていたり、周辺に悪影響を与えている場合には、地方公共団体の長などが相続財産清算人の選任を申し立てることが可能です。 1-3. 相続財産清算人に誰がなる? 相続財産清算人になるうえで、法律上の決まりはありません。しかし、相続財産清算人は、相続債権者や受遺者に対する弁済や財産の換価処分に加え、生計を共にしていた、または特別に親しい間柄にあったなどの理由で法定相続人がいない際に遺産を取得できる特別縁故者に対する相続財産分与の手続き、さらには国庫帰属手続きなど、多数の法的問題に対応しなければならないため、申立て先の家庭裁判所の地元の弁護士が選任されることが多いと言えます。