オードリー春日の英語がたった1年で驚くほど上達…秘密は「チャンク」にあった!
「オードリー春日のトゥースでチャンクな英会話」というNHKの番組が面白い。英語学習で肝となる「チャンク」を前面に押し出していることは非常に画期的だ。春日さんの急激な英語力の上達には目を見張るものがある。そこから学べることとは?(パタプライングリッシュ教材開発者 松尾光治) 【この記事の画像を見る】 ● 春日さんと「チャンク」がコンセプト 4月に始まったNHK(Eテレ)の「オードリー春日のトゥースでチャンクな英会話」という番組が素晴らしい。お笑いコンビ、オードリーの春日俊彰さんが過去1年間、ひそかに行なってきた英語レッスンをリメイクした番組だ。 このレッスンの目的は、3月に放映された特番「世界の春日プロジェクト」の準備のためだった。「英語がもうペラペラになっている状態で特番をやるので、今日から勉強してください」。1年前にこう宣告された春日さんは、放送日の決定した特番がかかっているので「もうやるしかない、やらざるを得ない」と腹をくくったという。 もともと英語は超苦手だったという春日さんが、「世界の春日プロジェクト」で、立派にハリウッド関係者に接触を試みるまでに成長したことは驚きだ。長い歴史を持つNHKの英語教育番組は、筆者の知る限り、これまでずっと「会話+フレーズ学習」という形式を守ってきた。それが今、番組タイトルにも入れるほど「チャンク」を前面に打ち出したのは、本当に画期的なことだと思う。 英語学習に興味のある人ならチャンクという言葉を知っているだろう。だが、チャンクが実際にどのように役立つのかを具体的に理解している人は少ない。断言しよう。チャンクを意識することこそ、英語が話せるようになるための重要な鍵になる。 チャンクを使った文の組み立て方と、チャンクを意識することのメリットを、例文で見ていこう。
● 英文とは、チャンクの組み合わせである 外国人の同僚に何か用件を伝えて、その返事を木曜日までにもらいたい状況だとする。このような英文が適切だ。 Can you please get back to me by Thursday? 木曜までに返事をもらえますか? この文をチャンクで分けると、以下のようになる。 Can you please / get back to me / by Thursday? それぞれのチャンクの意味を確認しておこう。 Can you please~ ~してもらえますか?(やや丁寧な依頼) get back to me 私に返事をする by Thursday 木曜日までに チャンクとはこのように、2~8語程度からなる「意味の固まり」のことだ。文を構成するブロックのようなもので、センテンスが完成品だとすれば、チャンクは部品と言える。 そして、この点がスピーキングのレベルを伸ばす上でもポイントとなるのだが、チャンクは、「そのまま入替可能なカタマリ」でもある。どういうことか? この文の3つのチャンクに番号を付けてみよう。 (1)Can you please /(2)get back to me / (3) by Thursday? 例えば(1)のチャンクを別のチャンクに入れ替えてみよう。Can you pleaseよりも丁寧にしたいので、Could youに入れ替えるとする。 Could you / get back to me / by Thursday? 木曜までに返事を頂けますか? もっと丁寧にしたいので、Would it be possible for you toで入れ替えてみる。 Would it be possible for you to / get back to me / by Thursday? 木曜までにお返事を頂くことは可能でしょうか? ややカジュアルで、相手の様子をうかがう口調にしたければ、Do you think you can が使える。 Do you think you can / get back to me / by Thursday? 木曜までに返事できると思います? こうした依頼系だけでなく、文頭部分に入れ替えて使えるチャンクの候補は、数えきれないほどある。例えば、 Why don’t you~? (~したらどうでしょう?) と提案する You’d better~ (~すべきですよ。さもないと…)と、警告や忠告のニュアンスを伝える I asked Kevin to~ (ケビンに~と聞いた・頼んだ)と、誰かに聞いた・頼んだ内容として伝える He finds it difficult to~ (~することは難しいと思う) と、困難であることを伝える こうした「導入チャンク」と呼ばれる文頭のチャンクを入れ替えるだけで、実にさまざまなことが言える。 では、今度は(2)のチャンクを入れ替えてみよう。オリジナル文はこうだった→(1)Can you please /(2)get back to me / (3) by Thursday? (2)を次の3つのチャンクに入れ替えることにする。 revise the report レポートを修正する provide feedback フィードバックを提供する let me know your availability for the project* プロジェクトにあなたが参加可能か私に知らせる *このチャンクは、さらに2つのチャンクに分けることもできる。let me know your availabilityというカタマリとfor the projectというカタマリになる これで次のような文ができあがる。 Can you please / revise the report / by Thursday? 木曜までにレポートを修正してもらえますか? Can you please / provide feedback / by Thursday? 木曜までにフィードバックを提供してもらえますか? Can you please / let me know your availability for the project / by Thursday? プロジェクトにあなたが参加可能か、木曜までに私に知らせてもらえますか? 最後に、(3)のパーツの入れ替えも見ておこう。(3)を次の3つのチャンクに入れ替えてみる。 first thing in the morning 明朝一番に sometime next week 来週のどこか before you leave for the day 今日、退社する前に すると、こうした文章が言えるようになる。 Can you please / get back to me / first thing in the morning? 明朝一番に返事をもらえますか? Can you please / get back to me /sometime next week? 来週のどこかで返事をもらえますか? Can you please / get back to me / before you leave for the day? 今日、退社する前に返事をもらえますか? 以上のように、チャンク単位で入れ替えることで、素早く簡単にさまざまな文が作れるようになる。試しに、チャンクの組み合わせを表にしてみよう。 計12個のチャンクを覚えて、組み替えて使えば、4×4×4の合計64個ものセンテンスがぱっと言えるようになる。 個別の単語ベースで英文を作った場合、こうはいかない。文を口に出す瞬発力や英文の自然さが大きく損なわれてしまう。