結婚にまつわるの驚きの格差…「結婚する・しない」、じつは所得額と大きく関係していた
現代の「日本の構造」、どれくらい知っていますか? 日本の共働き世帯数、日本人の労働時間、日本の労働生産性、事業所の開業率…… 【写真】なぜ日本で「結婚しない人」が増えたのか?…「結婚できない」若者たち 『日本の構造 50の統計データで読む国のかたち』では、橘木俊詔氏が少子化、格差、老後など、この不安な時代に必要なすべての議論の土台となるトピックを平易に解説します。50の項目で、日本の「いま」を総点検! ※本記事は、橘木俊詔『日本の構造 50の統計データで読む国のかたち』から抜粋・編集したものです。
結婚にまつわる格差
〈なぜ日本で「結婚しない人」が増えたのか? …「結婚したい」のに「結婚できない」若者たち〉で「結婚適齢期」の人々が所得が低いために結婚できないことを指摘したが、最初にそのことを確認しておこう。 図1(※外部配信でお読みの方は現代新書の本サイトでご覧ください)は30歳代の人々に関して、男女別・年収別に結婚の状況を示したものである。 ここでは4つの区分がある。すなわち、既婚、恋人あり、恋人なし、(異性との)交際経験なし、である。この政府の統計は20歳代も報告しているが、結婚にそう関心のない世代(特に20歳代前半)も含まれているし、結婚しない人に注目するので30歳代に限定する。 まず男性に注目してみよう。 年収300万円未満では、既婚者は10%を切る比率しかいない。もっと衝撃的なのは、恋人なしが38.8%、女性との交際経験なしが33.6%の高い比率だということである。 年収が300万円未満の男性は、70%ほどが女性と縁のない人生を送っているという悲惨な状況にいる。もっとも、中には女性に興味がないという男性もいることを認識しておこう。その比率は不明だが、とても小さいと予想できる。 年収が増加すると、既婚者の比率が増えて、600万円以上という高所得者だと既婚者は40%弱に達する。しかし、恋人なしと交際経験なしが合計で40%近くもいる。これらの男性は意図的に結婚しないのか、それとも努力はしているが成功していないか、のどちらかである。残念ながらこの表からは、その比率を読み取れない。 年収が400万円から600万円未満という中間層は、既婚者、女性との交際経験なしの双方に関して、300万円未満と600万円以上の男性の中間にいることがわかる。 もう1つ興味のある事実は、恋人ありと恋人なしのそれぞれは、どの所得階級を通じても20%前後と30%前後と、共通の比率にある点だ。恋愛は表面的には結婚とは直接関係のない現象なので、所得の影響はそれほどない。 逆に言えば、結婚するか、しないか、あるいはできないかは、所得の影響がある程度大きいのである。 女性の場合も見ておこう。 男性においては所得額が結婚に大きな影響があったが、女性では、既婚者の割合が一番多いのが300万円未満の人で、他の所得階級間では差はあまり見られない。男性と異なって300万円未満の女性でも結婚できるのは、夫の稼ぎが多ければ結婚できるか、本人がパートなどで働く可能性もあることを暗示している。 むしろ興味のあるのは、女性で600万円以上の高所得者は既婚者が16%とかなり低いことである。自分の稼ぎだけで充分生活できるので、結婚しなくともよいのか、一方で、恋人ありが40%近くもいる。自由な恋愛生活を楽しんでいる「独身貴族」の女性である、としておこうか。 以上をまとめると、日本において男性に関しては、その所得額が、結婚するか、しないか、できないかに大きな影響を与えるが、女性の所得額は影響しないとまでは言えないが、比較的小さいということになる。 結婚という家族形成にいたるには、男性の所得が女性のそれよりも大きな影響があることを示唆している。結婚できる人とできない人を所得差で見たが、結婚している夫婦のあいだにも別の格差が出現している。それは共働き夫婦において、所得の低い夫は妻の所得も低い比率が高いのである。 表1(※外部配信でお読みの方は現代新書の本サイトでご覧ください)は夫の所得別に妻の所得分布を示している。例えば夫の年間所得が300万円未満であれば、妻の年間所得も200万円未満というのが、じつに70%ほどを占めているので、夫婦ともに低い所得の組み合わせが多い。これは夫婦とも働いている場合に妻の所得から見ても言える。 さらに、図表では示さないが、夫と妻ともに高所得の夫婦も結構存在しているのである。橘木・迫田『夫婦格差社会』では、それをパワーカップル、ウィークカップルと称して、夫婦にも格差のあることを示した。 これを別の言葉で述べれば、似た者夫婦の所得版とみなしてよく、女性で働く人が増えれば自然とそうなるのが、現代社会の特色である。
橘木 俊詔