フォルクスワーゲンにフラれた924 ポルシェ944 ターボ(1) 進化を重ねル・マンで善戦!
フォルクスワーゲンのために開発が進んだ924
半世紀前のフランス・パリ・モーターショー。1974年のポルシェは、911のラインナップにターボを追加した。巨大なリアウイングと広がったリアフェンダー、エンジンリッドのイタリック・ロゴ。ポルシェのターボの、お約束が誕生した瞬間だった。 【写真】クラス最高水準の大人なグランドツアラー ポルシェ944 ターボ FRの924から928 最新911も (121枚) 一方で、ポルシェ944もターボの恩恵にあやかった。トランスアクスルのフロントエンジン・リアドライブ(FR)という魅力を、確実に引き上げたといえる。過小評価されてきたこのポルシェを遡ると、924へ辿り着く。 フォルクスワーゲンのために開発が進められた924だったが、最終的に選ばれたのは、カルマン社が生産するコストの低いシロッコ。ポルシェは、それまでに費やした3000万マルクと時間を無駄にするのか、プロジェクトを引き継ぐのか、岐路に立たされた。 その妥協案として導かれたのが、フォルクスワーゲン・グループが924に必要な部品を、安価で提供するというもの。その生産はアウディへ委託され、ドイツ南西部、ネッカーズルム工場の仕事も確保することが狙われた。 ポルシェの技術者、エルンスト・フールマン氏は、コストパフォーマンスの高いスポーツカーへ911を交代させたいと考えていた。既に開発が進んでいた、V8エンジンを搭載した928の提供と並行するように。その結果、924は量産化へ進み出した。
全体的な仕上がりは調和が取れていた
ただし、フォルクスワーゲンでの販売を想定していただけに、ポルシェとは呼びにくいクーペではあった。928に先駆けたFRモデルで、エンジンはアウディ100やフォルクスワーゲンLTという商用バンも搭載する、水冷の直列4気筒だった。 スタイリングは、シャープで現代的なものだったが、シャシーに目新しさはなかった。サスペンションは前がゴルフで、後ろはビートル譲り。リアブレーキはドラム。トランスアクスルは、ポルシェの技術が投入されつつ、アウディ100と部品を共有した。 もっとも、それらが組み合わされた成果は悪くなかった。1977年にAUTOCARは試乗し、こうまとめている。「部品を集めたクルマのように思えるとしても、全体的な仕上がりは調和が取れています。設計は間違いなく悪くありません」 924が、フォルクスワーゲンやアウディから発売されていれば、間違いなく成功作として認識されたことだろう。だが、ポルシェとなると話は違った。英国価格も、アルファ・ロメオGTVより3割も高かった。 操縦性は同時期のライバルより優れていたものの、洗練性や動力性能は感銘を残すほどではなかった。とはいえ、ポルシェは多少の弱点があったとしても、全力を投じて改善を施すという姿勢を持っていた。 1976年に、フールマンは次のように取材へ答えている。「わたしたちの指揮のもとで、924は本物のポルシェのように進化していくでしょう」。長い時間をかけて設計を改めるという、姿勢表明といえた。その中核になったのが、ターボチャージャーだ。