<下剋上で頂へ―’24センバツ・中央学院>第4部・つながる/上 「千葉の二刀流」目標に /千葉
◇「ヒーロー」に憧れ、自身も一人二役 中央学院が初のセンバツ出場を果たした2018年3月、颯佐心汰(2年)は小学6年の野球少年だった。「地元の高校が出ているから」と、自宅のテレビで、2回戦の明徳義塾(高知)戦を見守った。 【写真で見る歓喜の瞬間】歴代のセンバツ覇者たち そこに映っていたのは、「千葉の二刀流」とされ、注目を浴びていた大谷拓海さん。「投手をやりながら、1番打者もできる。すごい」。 大谷さんはその後の「夏」はけがの影響で登板しなかったが、主力だったことは変わらず、颯佐にとっては今も変わらぬヒーローだ。当時、「大谷さんを超える選手になりたい」と目標にした。 颯佐は、中学時代には大谷さんがかつて在籍した硬式野球チーム・船橋リトルシニア(船橋市)に進んだ。そして、中央学院を選び、今や最速148キロの投手であり、抜群の身体能力を生かして遊撃手でもある。目標としていた大谷さんと同じ「二刀流」に成長した。 1月下旬、同校を訪れた大谷さんは颯佐に「甲子園でホームラン打てよ」と伝えた。颯佐は「すごい人なのでうれしかった。センバツでは多くの人を魅了するプレーをしたい」と振り返った。 大谷さんは高校卒業後、社会人野球チームのセガサミーに入り、昨季限りでユニホームを脱いだ。高校時代の夏の思い出は、西千葉大会準決勝の習志野戦という。「1年生のサヨナラホームランで勝ち、この流れで優勝した。甲子園は開幕初日で敗退し、すぐ終わってしまったが、みんなで一丸となって戦えたことが何よりも良かった」と振り返る。 習志野戦は、中央学院の青木優吾さんが延長十回で本塁打を放って勝負を決めた。現メンバー・勝吾(同)の4歳上の兄だ。 勝吾はその日のことを鮮明に覚えている。自身は球場に行かなかったが、試合観戦していた母親がうれしそうな表情で帰宅し、優吾さんの活躍を伝えた。録画した映像を見て、1年生でありながら活躍する姿に「すごい」と尊敬した。 しかし、優吾さんの最後の夏は新型コロナウイルス禍で甲子園は中止。挑むことさえ叶わなかった。勝吾は「目標だった兄とそろって甲子園に出られることに、うれしさが大きい」と万感の思いを口にし、「めったに立てる舞台ではない。自分らしいプレーを見せたい」と意気込む。【林帆南】 ◇ 先輩から後輩へ、前回から今回の甲子園へ、裏方からベンチ入り選手へ……。さまざまなつながりがあって、センバツ出場を果たす中央学院。そんな、つながりの物語を伝えたい。