超新星「SN 1987A」で生じたのは中性子星と確定
1987年に観測された超新星「SN 1987A」は、現代の天文学者が間近で観測できた「II型超新星」として、現在でも大きな注目を集めています。一方で、爆発から間もないことから多くの謎も抱えています。その1つが、SN 1987Aによって「中性子星」と「ブラックホール」のどちらが生成されたかです。 今日の宇宙画像 ストックホルム大学のC. Fransson氏などの研究チームは、「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」によるSN 1987Aの観測データを分析し、中心部の環境が中性子星以外では説明ができないという直接的な観測証拠を提示しました。今回の研究結果はSN 1987A、そして一般的な超新星爆発に対する新たな視点を提供することになるでしょう。
■超新星の研究での貴重な観測対象「SN 1987A」
1987年2月24日、かじき座の方向で突然星が明るくなる超新星が観測されました。それはすぐに、地球から約16万光年離れた大マゼラン雲の内部で発生した、重い恒星が寿命の最期に発生させる大爆発である「II型超新星」であると確認されました。 1987年に観測された1つ目の超新星であることから「SN 1987A」と名付けられたこの超新星爆発は、最大視等級が2.8等級と肉眼で見える明るさとなり、これは1604年に観測されたケプラーの超新星以来383年ぶりの出来事です。現代の天文学者が宇宙のスケールでは近所とも言える距離で遭遇したII型超新星として、SN 1987Aは非常に注目を集めました。 例えば、SN 1987Aの光が地球に届く2~3時間前に、超新星爆発に伴って発生した素粒子「ニュートリノ」が地球に降り注ぎました。当時日本に設置されていた水チェレンコフ検出器「カミオカンデ」が偶然にもこのニュートリノを捉えることに成功し、謎多き素粒子であるニュートリノの性質の理解が大幅に進みました。カミオカンデはもともと陽子崩壊と呼ばれる全く別の物理現象を捉えるために設置されたものだったため、超新星ニュートリノの検出は全くの偶然であり、嬉しい誤算でした。この出来事は、カミオカンデの建設を主導した小柴昌俊氏が2002年にノーベル物理学賞を授与されるきっかけにもなっています。 SN 1987Aは、発生から37年経った現在でも注目され続けています。距離が近いことに加えて、爆発から間もない超新星の環境を詳細に観測できる数少ない場所だからです。しかし、数十年の観測にも関わらず、未だによくわかっていないこともあります。その1つは、SN 1987Aが何を残したかです。 SN 1987Aは太陽の約20倍の質量を持つ恒星が爆発したことで生じたことが分かっています。現在の理論では、この質量の恒星が爆発後に生成するのは「中性子星」という、天体全体が原子核でできていると例えらえるほど非常に高密度な天体です。 SN 1987Aの研究開始の当初、先述のニュートリノの観測結果から、SN 1987Aの中心部で生じたのは中性子星ではないかとする推定がありました。また2019年頃より、観測結果の分析から、やはり中性子星ではないかという研究が複数提出されています。ただし、これらは間接的な証拠に基づくものであり、中性子星が存在するという確実な証拠ではありません。