『オクラ』が提示する白でも黒でもない正義 反町隆史「誰だって過ちは犯す」が沁みる
対等なバディになった千寿(反町隆史)と利己(杉野遥亮)
黒でも白でもないグレー。正義を身にまとったキャラクターはいびつだ。そのいびつさは、容易に悪に転化するものである。しかし、千寿からは、強い正義感が引き起こす歪みのようなものを感じない。同じように「正しさ」が連れてくる、心にまとわりつく重さもない。冗談を飛ばしながらも、確固とした目的をもって見すえるその目は、苦しみを濾過した透明さをたたえている。千寿が胸に抱く正義は、限りなく悲しみに近い感情に思えた。 利己にとって過去を清算した第5話はスタートラインだった。千寿が利己を名前で呼び、スーツの前ボタンを外すように言ったのは、対等なバディとして認めた証拠ではなかったか。最後まで自分から誘わなかったのは千寿の優しさである一方で、トラウマも伝わってきた。千寿はもう二度と仲間を失いたくないのだ。 「誰だって過ちは犯す。傷や痛みは残るし、やり直すことはできない。ただ、次に生かすことはできる」と千寿は語る。第5話ではオクラのチームスピリットも見えた。昼あんどんに見えた室長の幾多(橋本じゅん)が加勢に突き付ける意味深な言葉。千寿の極秘ファイルによるとオクラのメンバーはブラックリスト入りしていた。国外逃亡した鴻上はすでにこの世にない。バディが対峙する闇の深さが垣間見えた。
石河コウヘイ