<チェジュ航空旅客機事故>夜通しDNA分析進める韓国国科捜「指1本まで探す」
韓国全羅南道(チョルラナムド)務安(ムアン)国際空港チェジュ航空惨事5日目の1日午前、犠牲者179人の身元がすべて確認された。だが、犠牲者の遺体すべてが家族の元に戻ったわけではなかった。国立科学捜査研究院(国科捜)が事故で散らばった遺体本体と断片を収容して分析した後、検案・検視に至るまで長い時間がかかるためだ。 【写真】チェジュ旅客機事故現場を訪れた遺族が追悼祭を行っている ◇犠牲者179人身元確認…遺体の引き渡しには時間がかかる見通し 遺族たちは焦る気持ちで国科捜の分析結果を待っている。国土交通部中央事故収拾本部によると、この日午後10時基準で犠牲者179人のうち24人が家族に引き渡された。引き渡しが完了した犠牲者を含めてこの日まで合計72人に対するDNA分析の結果が完了した。 中央日報は現場に派遣された国科捜関係者から具体的な分析過程やそのジレンマを聞いた。国科捜は惨事現場に法医官・法医調査官約30人、本院遺伝子分析チーム約20人の合計約50人を投じて遺体の確認に総力を挙げている。DNAの分析を担当した国科捜関係者は「できる限り早く犠牲者を遺族の元にお返しできるように夜を徹して分析を進めている」と話した。 ◇遺体本体と断片の対照作業に大きな困難 現在、国科捜はDNA鑑識国際標準「STR(Short Tandem Repeat)分析法」で犠牲者の身元の確認作業を進めている。STR分析法はDNA内に存在する特定位置の反復序列を比較して個人を特定する方法だ。各個人によって反復回数が違うため一種の「DNA指紋」と理解するほうが簡単だ。 具体的な分析過程は以下の通りだ。まず警察が179人犠牲者家族の口腔上皮細胞から対照サンプルを採取する。同時に現場に派遣された法医官が事故現場から収容した犠牲者本体と遺体の断片からサンプルを採取する。その後、サンプルをDNA分析機器を備えた原州(ウォンジュ)本院に送る。遺伝子分析チームはサンプルを受けると塩基配列分析器などを利用して個別犠牲者のDNA分析の結果を導き出す。個別DNA分析までは早ければ数時間内に完了するという。 最も大きな難関は犠牲者の遺体本体と断片を一致させる作業だ。確認された遺体の断片だけで607個に達するうえ事故現場から追加で断片が収容される可能性もある。国科捜関係者は「179人の犠牲者の遺体断片が誰のものなのか分からないので一つひとつ対照・分析する作業に長い時間を要する」と話した。このように個別の遺体をできるだけ集めた後、採取を終えた遺族のDNAサンプルと対照して家族関係を確認する。その後、法医官と検事の検案・検視を経て警察などと協議して遺体を引き渡す。 今回の惨事犠牲者のうち兄弟・姉妹が少なくない点も分析結果を難しくしている要因だ。兄弟・姉妹の場合、STR技法だけでは限界があり父系遺伝を確認するY-STR分析法や母系遺伝を確認するミトコンドリアDNA分析を追加で実施して初めて確認することができる。幸いDNAの毀損はほぼないという。普通、火災現場の遺体の場合、高温のためDNAが毀損を受けて遺伝子分析に困難を強いられることがある。国科捜法医官は「遺体の毀損が激しい事故の特性上、簡単ではないが、『指1本まで最大限探して遺族にお返しする』という気持ちで臨んでいる」と伝えた。 ◇国科捜、機長・副機長を解剖検査…「特異事項ない」 国科捜は先月31日、光州(クァンジュ)科学捜査研究所で、惨事によって犠牲になった機長・副機長の解剖検査も進めた。事故にアルコール、麻薬、有毒ガスなどの影響があったかどうかを確認する通常の手続きだ。現在まで特異事項は見つからなかったという。他の犠牲者とは違い、運転を担当していたことから万一の可能性に備えて解剖検査を実施したという。2011年済州島(チェジュド)沖に墜落したアシアナ航空貨物機の機長・副機長の遺体も解剖検査が行われた。 元日、務安国際空港の待合室では記者会見が開かれた。一睡もせずに夜を明かした遺族は遺体の引き渡しがなぜ遅れているのか政府の詳しい説明と疎通を要求した。遺体の断片の収容を諦めれば引き渡しの可能なのかという指摘に対して、全南警察庁捜査部のナ・ウォノ部長は「本体DNA結果が明確に出てこないことには残りの遺体の断片が誰のものなのかを知ることはできない」とし「残りの遺体の断片が誰のものか特定できなければ姓名不詳処理となるが、断片の主人が誰か分からない遺体を諦めることはできないので時間がかかっても遺体の本体と断片をすべて確認するのが理想的」という趣旨で説明した。