岸田首相も日銀も「余計なことはするな」、森永康平氏が「骨太の方針」に噛み付く! PB黒字化明記は大増税の予兆だ
■ 外圧でしか国内投資を盛り上げられない情けなさ 森永:もっとも、国家は企業とは違い、通貨を発行できますから、国債はそもそも「借金」なのかという疑問は当然浮かびます。自国の通貨を持たないEU諸国と比較したときに、極端に厳しい財政規律を守る必要があるのでしょうか。 国債の発行残高が増えると「円の信任が毀損される」というお決まりの反論がきます。 中には「昨今の円安は、コロナ禍で政府が“バラマキ”した結果だ」という見方もありましたが、円安が進んでいるということは、ドル高を意味します。アメリカ政府は日本以上に債務超過にあることは周知の事実ですし、コロナ禍で日本以上の財政出動をしているのです。 「緊縮財政派は何を心配しているのだろう」と疑問に思います。ただ、国家と企業・家計の財政を混同して語る人があまりにも多いので、私は国債はそもそも借金なのか、という話からはしないようにしています。 ただ、明るい兆しもあります。それは、庶民の生活があまりにも苦しくなってきているので、マクロ経済政策に関する関心が高まっていることと、円安と日本の賃金の安さで、外資企業を中心とした投資が日本国内に集まってきていることです。 後者に関しては、TSMCのケースが典型例ですが、東アジアの地政学的リスクが高まるにつれて、日本を製造業の一拠点にしようという動きが盛んになっているのです。 現在の円安は国外のインフレを輸入しているのが主要因で、これを改善するためには製造業の国内回帰をはじめとした供給力強化が必要です。外圧によってしか変われないのはなんとも情けない話ではありますが、それでも民間主導で投資が増えてきているのは歓迎すべき話だと思います。 ──自民党の積極財政派は議連を立ち上げ、若手議員を集めるなど党内での影響力が拡大しているのではないかという報道もありましたが。
■ 政府や日銀は余計なことをするな 森永:議会制民主主義は、「数」の論理で政策が決定されるという側面は見逃せません。積極財政派は自民党内のみならず、国民の中でも少数派なので、政策に反映されるのはなかなか難しいのが現実ではないでしょうか。 直近に行われた各知事選や補欠選挙の結果を見ていると、裏金問題で自民党への国民感情は非常に悪化しています。庶民の生活が苦しいのであれば、短期的には減税や現金給付、社会保険料の減免などで本来対応すべきなのですが、その真逆を行っているのが財政健全化政策です。 先ほどもお話しした通り、現在は外圧でやっと日本経済に明るい兆しが見えてきました。デフレ脱却も射程圏内に入ってきていますし、民間企業は賃上げを頑張っています。 政府や日銀に対しては「PB黒字化のような余計なことをせずに、黙ってなさい」というのが、私の正直な感想です。
湯浅 大輝