岸田首相も日銀も「余計なことはするな」、森永康平氏が「骨太の方針」に噛み付く! PB黒字化明記は大増税の予兆だ
■ 国債利払い「金利上昇に耐えられない」は本当か 森永:そもそも、「異次元の金融緩和」政策で金利を下げてきたわけですから、金利のコントロールが効くことはこれまでの歴史が証明しています。 なぜコストプッシュインフレ下において金融緩和の解除を急いだのかがそもそも分かりませんが、実態として(YCC撤廃後)国債の利回り(10年もの)は1%台までしか上がっていないわけです。「2.4%」と予想するのは腑に落ちません。 もう一つ疑問があります。「金利上昇に耐えられない」は本当なのか、という点です。実際、現在のインフレ率は3%台(名目値)になっています。インフレが進んでいるということは、税収がその分増えていくことを意味します。 こういうことを考えますと「国債の利払い費の負担」だけを強調する手法はチェリーピッキング的だとも言えます。「金利が上がる→財政余力が必要だ→PB黒字化が必要」という論理は財務省が使う「自己実現的予言」とも表現すべきレトリックだと感じます。 ──実質賃金は過去最長のマイナスが続いています。そもそも、金利ある世界でやっていけるだけの余力が日本経済にはあるのでしょうか?
■ さらなる増税が予想される 森永:そんな余力はないでしょう。実質GDPの個人消費は4四半期連続のマイナスになっていて、これはリーマンショック以来です。リーマンショック時は世界的な金融危機が起きていましたが、現在金融危機は起きていませんし、もっと言えば「リベンジ消費」が期待されているほどです。 日本のGDPに占める個人消費の割合は約55%ですが、その消費力が極端に落ち込んでいるのが現状なのです。 国家も企業も、中長期的な成長を見込むのであれば「投資」をしなければなりません。国家の場合はそれが「財政出動」にあたります。PB黒字化を目標にするということは、国債発行に上限を設定することの他に、歳入を増やさなければなりませんから、さらなる増税が必要になることは目に見えています。 ただでさえ弱っている国内経済に「PB黒字化」を金科玉条としたマクロ経済政策を打ってしまうと、供給力がさらに先細ってしまいます。 もし本当にPB黒字化をはじめとした“財政健全化”を目指すのであれば、歳入アップを目指すべきでしょう。 「日本は人口減少していくから財政出動しても無駄だ」という意見もありますが、例えば台湾のTSMCの半導体工場を誘致した熊本の菊陽町では、これから所得も上がるでしょうし、人口も増えていくでしょう。投資をすることによって、結果的に税収も増えていくのです。 むしろ、PB黒字化を金科玉条のように掲げて、投資(=財政出動)をしないことになれば、民間の懐は寂しくなり、税収も吸い上げられなくなります。結果として、歳入と歳出のバランスが崩れ、PB黒字化という目標から遠ざかってしまう可能性すらあるのです。