「コールセンターのDX」を推し進めるAI&SaaS銘柄の勝算
石井 智宏(いしい・ともひろ)/1973年12月28日生まれ。1998年早稲田大学卒、ソニー入社。さわかみ投信執行役員、クオンタムリープのエグゼクティブパートナーを経て、2014年12月から現職(撮影:梅谷秀司)
人手不足に悩みながら、いまだ電話での対応が中心のコンタクトセンター。そこへチャット対応できるSaaS型ツールを展開して成長し続けているのが、2021年9月に東証マザーズに上場したモビルス(4370)だ。上場後初の決算となった前2021年8月期は営業利益が前期比3倍となる1億3400万円。今期も同2倍となる2億8000万円を見込んでいる。石井智宏社長に、これまでの軌跡と成長戦略を聞いた。 ――コンタクトセンター市場を深掘りしています。 コンタクトセンターの市場規模はシステム関連で5500億円、BPO(ビジネスプロセス・アウトソーシング)関連で1兆円。合計1.5兆円ある。まだまだ電話(コールセンター)が多く、ほとんどデジタル化していない。十分な成長余地があり、そこをしっかり押さえることが重要。われわれは「サポートテック」といっているが、まずはサポートを徹底的にやっていく。ここが遅れている領域と思うからだ。 ――2016年リリースの「MOBI AGENT(モビエージェント)」を皮切りにSaaS製品を充実させています。 今も骨格は有人対応向けの「モビエージェント」。これはコンタクトセンターのオペレーターにチャット対応してもらうためのツールで、そこに自動応答ツールの「MOBI BOT(モビボット)」も載せていった。 今のAI(人工知能)は人の代わりをすべてできるわけではないのでオペレーター対応は基本的にまだ人になるが、従来の電話から、メールを含めたチャット対応にシフトする。市場のボリュームはまずそこに来ると見立てて、主力製品をきっちり持ってきている。 ――モビルス製品の強みは。 いちばんの強みは、オペレーターがチャットで対応するところに主眼を置いている点だ。ボットは決まった答えを返しているだけ。AIをつくる教師データとしては、人が対応したデータにすごい価値がある。勝手に使えるデータではないが、企業と特別な取り決めをしたうえで活用させてもらい、オペレーターやスーパーバイザーを支援するためのAIを開発している。 例えばオペレーターが困り始めていれば、「お客さんが怒って炎上しているから、スーパーバイザーに引き継いじゃいましょう」と知らせる。個人情報を取り扱わないコンタクトセンターならば、個人情報がまぎれこんでしまった際に、「削除手続きを取ってください」と指示する。こうしたことはAIが活用できる領域。モビルスの「MooA(ムーア)」というAIサービスは、他社がなかなかまねできないものになっている。
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山内 哲夫