燃料デブリ分析の現状と今後 東電・JAEA説明より<福島第一原発>
日本原子力研究開発機構(JAEA)は、福島第一原子力発電所2号機で2024年11月に採取された燃料デブリを分析した結果、核燃料の主成分であるウランを検出したと公表した。「燃料成分が含まれる」「典型的なデブリの一部」と評価している。 東京電力とJAEAは分析結果や今後について、 ■採取されたデブリは表面の放射線量が毎時8ミリシーベルト。表面にウランを多く含んだ箇所があることを確認したほか、鉄やニッケル、ジルコニウムなどの金属成分も確認。これから砕いての分析も実施。 ■2回目の採取は、1回目の実績がある「釣り竿型」ロボットで2025年3月から4月にかけて着手予定。 ■今後の採取に使用を予定していたロボットアームについては、これまでに確認したケーブルの劣化断線の類似箇所調査などを含めたメンテナンスや試験を継続する。 とした。 <2024年12月26日・東京電力とJAEAの説明より> Q ガンマ線測定で採取デブリは毎時8ミリシーベルトだったとのことだが、東電が当初測定・公表していた毎時0.2ミリシーベルトとの差があるのはなぜか。この数値は高いのか。 A【JAEA】東電は採取デブリから20センチ離れた場所で測定しているが、JAEAは1センチ2センチの距離で測っているため差が出た。福島第一原発の試料としては放射線量は高くないと見ている。 Q 1号機から3号機までのデブリの総量880トンを考えると相当高い線量になると考えて良いか。 A【JAEA】取り出されたものにもよるが、そのように考えて良い。これから1年かけて分析を行い、将来的にはまとまった量のデブリの想定放射線量にも言及できると考えている。 Q 今回採取されたデブリについて、JAEAとしての率直な受け止めは。 A【JAEA】外観・X線の分析からしても「典型的なデブリの一部が取得できた」と考えている。外観を見ると空孔があったり何かを巻き込んだようなものだったりしているので「一般的に燃料デブリはこういう物かな」という想定に一致しているものだったと思う。X線CTを見ると空隙があり、これまでJAEAで福島第一原発事故を想定し模擬的に作った「模擬デブリ」と酷似している。燃料成分、被覆管の成分とみられるものがあるので、表面上は金属が多くみられるが、採取デブリを砕いて中を見ていくと、もう少し詳細にウランとジルコニウムが反応してできた生成物が見られるのではないかという期待が持てる。良いサンプルが取れているという認識。 Q 今の段階で事故の進展についてわかることはあるか。 A【JAEA】非破壊分析の段階ではそこまでの評価はできない。今後詳細分析でウランの結晶状態などを分析してから評価結果をまとめていきたい。 Q 今後について。「釣り竿型ロボット」ではなく大型の「ロボットアーム」での採取はいつになるのか。 A【東電】目標としては2025年度下期と考えている。 Q 2025年春に予定される2回目の採取はどのようなものを取りに行くか。 A【東電】「釣り竿型」ロボットの設置場所は変わらないが、少し違う場所から採取できないか検討中。ロボットの先端の「爪」の部分の大きさは変わらないので、基本的には同じようなものをもう一つ取りに行くと考えている。 Q 3回目はどうするか。 A【東電】2回目の結果を踏まえて検討していきたい。 ……… 福島第一原発では2011年の事故から約13年8ヵ月が経過した2024年11月7日に、溶け落ちた核燃料が原子炉内の金属やコンクリートと混ざり合って冷え固まった「燃料デブリ」の試験的取り出しに成功した。現在、茨城県にあるJAEAの研究施設でデブリに含まれる成分やデブリの構造を分析する研究が行われていて、この分析から事故時の状況を把握し、今後のより詳細なデブリ採取計画へとつなげたい考え。 今後、採取された燃料デブリは、既に研究が行われている日本原子力研究開発機構(JAEA)の大洗原子力工学研究所のほか、同じくJAEAの原子力科学研究所、また、日本核燃料開発株式会社(NFD)、MHI原子力研究開発株式会社(NDC)の4つの施設で分析が行われることとなっているが、これに加えて、兵庫県にある大型放射光施設SPring-8での研究も計画されている。SPring-8は細く強力な電磁波である「放射光」を用い、物質の種類や構造、性質を詳しく知ることが期待できる施設で、いわば強力なレントゲンで物質の内部を明らかにするようなもの。創薬や産業製品の評価といった研究にも用いられたことがある。 【燃料デブリ試験的取り出し・これまでの経緯】 ■2021年:当初の試験的取り出し着手予定 ⇒ロボットの開発遅れ、経路への堆積物の詰まり発覚などで延期 ■2024年8月22日:試験的取り出し着手を計画するも「現場での棒の順番ミス」が発覚し取りやめ ⇒東京電力が現場に立ち会っていなかったことなどが問題に。 管理体制の見直しを行う。 ■2024年9月10日:試験的取り出し作業に着手 ■2024年9月14日:ロボットが一度デブリをつかむ ■2024年9月17日:カメラ4台のうち2台の映像が見られなくなるトラブルで中断 ⇒高い放射線が影響でカメラ内部に電気がたまり不具合を起こしたと推定。 カメラ交換を決断。 ■2024年10月24日:カメラの交換作業を完了 ■2024年10月28日:試験的取り出し再開 ■2024年10月30日:デブリの把持・吊り上げに成功 ■2024年11月2日:デブリを事故後初めて格納容器外へ取り出し成功 ■2024年11月5日:放射線量が「取り出し」基準クリアを確認 ■2024年11月7日:試験的取り出し作業完了 ■2024年11月8日:デブリの水素濃度などが輸送の基準を満たすこと確認 ■2024年11月12日:事故後初めてデブリを第一原発構外へ 研究施設へ輸送
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