『マルス-ゼロの革命-』日向亘の再登場に歓喜! 新生マルスは“現実の問題”に挑戦する
不慮の事故による球児(泉澤祐希)の死亡、そして無期限活動休止……さらには“ゼロ”こと美島零(道枝駿佑)が姿をくらまし、強い一体感を持っているかに見えた動画集団“マルス”が空中分解してしまった『マルス-ゼロの革命-』(テレビ朝日系)第6話。 【写真】零(道枝駿佑)に抱きつく渾一(板垣李光人) あれだけ“マルス”をヒーローだと持て囃していたのに、いとも簡単に手の平を返し、今度は180度正反対の態度をとるオーディエンスも恐ろしいうえ信用ならないが、それ以上に誰もいない部室が空虚で切ない。 しかしそんな“マルス”のピンチに手を差し伸べたのは、彼らの活動によって真実を打ち明けることができ救われたトップスプリンター・不破(日向亘)だ。球児が“マルス”やそのメンバーに対して語っていた想いを共有し、その弔いのためにも彼らは再集結する。 そして今話は、香恋(吉川愛)が自身の父親でクロッキー社の社長・國見(江口洋介)と向き合い決別するまでが描かれた。いろんな男に騙されてばかりいた自身の母親を反面教師にすべく、“騙されるくらいなら騙してやる”の精神で生きてきた香恋は、薄々父親の正体に気付きながらも、それに真正面から向き合うことから逃げ続けている。不動産詐欺事件に巻き込まれた被害者とばかり思っていた父親が実は事件を黙認していたことを知り、さらにはそんな父親から情けない捨て台詞を吐かれ傷つけられた杏花(横田真悠)のことがふと思い出された。 自身が“正義”だと信じ込んでいたものを疑い、訂正するのには大きな勇気が必要になる。SNSで簡単に発信できてしまえる今、正義の名の下に憤慨したくなるような怒りの火種はそこら中に落ちている。香恋も「騙される」ことへの恐怖心や軽蔑心が人一倍強いからこそ不安に駆られるあまり、その反動でまるで自分自身に言い聞かせるように「ミスターK」としての過剰な動画配信をしていたのではないだろうか。 むしろ自分が“悪”だとして切り捨てた方が実は正しかったなんてことを認めてしまうのは、本当に香恋にとっては自分自身の根幹が揺らいでしまうようなことだったのだろう。ゼロが彼女に言い放った“ただ正義を振りかざして悦に入る”のは暴力と何ら変わらないこと、「目に見えている世界が全てだと思うな」という言葉は改めて肝に銘じたいところだ。 香恋は自分が信じたい現実や正義だけ見るのではなく、本当にその目で事実を確かめ、見つめる勇気と覚悟を得た。アジアンマフィアと自分の父親が親密そうにやり取りしている動画を配信し國見の化けの皮を剥がす。元祖・“マルス”メンバーだった倉科エリ(大峰ユリホ)を追い詰めてしまったり、球児たちに偽情報をつかませるように騙したことなどについて向き合う気持ちを認めてしまえば、自分が壊れてしまうのだろう。 それでも自身が加担してしまった“取り返しのつかないこと”への後悔の大きさに涙し、抑え込んでいた人間的な感情を取り戻しながら涙する香恋の姿に惹き込まれた。「おかえり」と迎え入れてくれる“アイコン”こと逢沢渾一(板垣李光人)の一言があったかい。 それにしても「保身や利権に塗れた腐った大人たちを一掃して俺たちの世界を取り戻す」と青臭いことを言い放つゼロに、地面師の立花(尾美としのり)も懸けてみたくなる気持ちがわかる。現実社会でも裏金問題や忖度が蔓延っていて辟易する。クロッキー社と流通最大手・エンダーグループが手を組み導入されるクレジットカード「クロッキー」が保険証や運転免許証と紐づけられ身分証になるという話はまさにマイナンバーカードを彷彿させる。この話を完全にフィクションだとは割り切れない現実の出来事ならいくらでも挙げられそうだ。 “マルス”の奮闘によってアジアンマフィアと繋がりがあることが白日に晒された國見だが、彼らが進める国を上げての壮大なプロジェクトの行く末はどうなるのか。早速、全員のスマホが使えなくなるサイバーテロが仕掛けられたようだ。 賢成(山時聡真)不在ではあるが、不破が新メンバーとして加わった“新生マルス”の革命第2章が荒々しく幕を開けた。
佳香(かこ)