いま、世界中で発生している「国威発揚」現象…その「ヤバすぎる実態」
神格化される安倍晋三、聖地となったトランプタワー……。 いま、世界中で静かに進行している「新しい愛国=国威発揚」の正体とは? 【写真】いま、世界中で発生している「国威発揚」現象…その「深刻な実態」 戦後80年と昭和100年の節目を迎えようとしている今、私たちを愛国へと扇動する「新しいプロパガンダ」の真実を見極めるべく、歴史家・辻田真佐憲氏が現地を徹底取材します。 ※本記事は、12月6日発売の辻田真佐憲『ルポ 国威発揚』から抜粋・編集したものです。
世界中で巻き起こる「国威発揚」
今日、歴史と文化がますます情報戦の武器となり、政治的な動員のための旗幟となっている。プロパガンダと聞いて、もはやだれも歴史上の用語だと感じなくなった。われわれの世界はふたたび、国威発揚の大きな渦に巻き込まれつつある。 このような戦いの舞台は、実際の砲弾が飛び交う戦場ではない。むしろ博物館、史跡、公園、看板、説明文、銅像、記念碑、お土産、落書きなど、日常の風景に幅広く散らばっている。ときに自治体の観光案内、地元民の意見、タクシー運転手との何気ない雑談すらも、重要な役割を果たすことがある。 わたしは約2年半にわたり、そのような日本と世界に点在する35ヵ所以上の「戦場」を訪ね歩き、その背後に潜む物語や動向を探り続けてきた。 令和になって新たに神武天皇像ができたと聞けば、岡山県の離島にわたり、安倍晋三を神として祀る神社が創建されたと聞けば、長野県の秘境に分け入った。 靖国問題を考えるために、知られざる「仏教版の靖国」や「関西の靖国」に足を運び、領土問題を考えるために、北方領土を望む北海道の根室市、竹島が属する島根県の隠岐の島町、尖閣諸島が属する沖縄県の石垣市におもむいた。 本書では日本を中心に取り上げるものの、ナショナリズムやイデオロギーをめぐる問題はこの国に限ったものではない。そこで日本の現象を相対的に捉えるため、わたしは積極的に海外にも足を伸ばした。 モディ首相のもとで世界一の巨像が建てられたと知れば、インドの山間に踏み入り、トランプ元大統領のグッズが大量に売られていると知れば、ニューヨークの高級ショッピング街に立ち寄った。また歴史認識問題を考えるために、ドイツの陰に隠れがちなイタリアや、中国や韓国にくらべてあまり注目されないベトナムやフィリピンに臨んだ。 本書は、こうした取材の成果をまとめたルポルタージュである。