「AIゆりこ」が示す“抜かりなき”小池百合子の都知事選3選戦略…「空中戦」と「地上戦」、小池・蓮舫の戦術を分析
■ 「空中戦」も「地上戦」も、抜かりない現職・小池氏 今回の都知事選において、小池、蓮舫の両氏は、支持母体の明示を回避して「完全無所属」を標榜するという選挙戦略をとっている。それはなぜなのか。 これを理解するために、選挙において重要だとされる2つの運動形態、すなわち、組織的な選挙運動である「地上戦」と、メディアを使った選挙運動である「空中戦」について説明をしていきたい。 まず小池氏であるが、「地上戦」については、6月10日に、自民党の萩生田光一都連会長が、小池氏が都知事選に出馬する場合には支援を行う意向である、ということを表明した。 こうした自民党の東京都連の意向を受けて、小池氏は6月12日の都議会最終日に都知事選への出馬表明を行った。しかしながら、小池氏と自民党との関係は微妙なものであった。というのも、第一に自民党はこのところ、岸田内閣の支持率の低迷に引きずられて、その政党支持を低下させており、必ずしも自民党の支持を「明示的」に得ることは、東京に多いといわれる無党派層の支持を得られないこと。 第二に、対立候補の蓮舫氏が小池氏と自民党を同一視し「反自民、非小池」という視線を鮮明にしており、自民党が「明示的に」小池氏を支援しては、国政の対立を都政に持ち込むことに対する、デメリットを回避できないこと、などがある。 そこで小池氏は、特に政党の支援を求めない「完全無所属」のスタンスを維持することとした。しかし、それらの政党からの支持を拒むものではない。いわば政党色を隠した「ステルス選挙」を展開することとなる。 そのことは、出馬表明を行った6月12日の各会派へのあいさつまわりにおいて非常に象徴的に表れていた。 公明党の会派への挨拶においては、多くの公明都議と親密に握手するなど蜜月ぶりを示したが、自民党の会派への挨拶においては、小池氏は自民党の会派から今後の協力を呼びかけられてもそそくさとその場を去ることとなった。 つまり、小池氏は「地上戦」における自民党の組織的な支援を期待はするものの、「空中戦」における「明示的」な選挙支援は必要としないという姿勢を明確にしていた。 小池氏は「空中戦」への準備に抜かりがない。新たなネットという選挙戦のフィールドで「AIゆりこ」という新兵器を投入し、話題の独占をはかった。公開したのは、出馬表明の翌13日だった。入念に仕込んでいた様子が垣間見える。 こうした小池氏の動きに対して、蓮舫氏も座して見ていたわけではない。